My Favorite
Comics

基本的に、いっぺん読んで気に入った本しか買わない人間です。
しかし、マンガは図書館には置いてないし、ふつう立ち読みも禁止。
近所でブックオフが利用できる大学時代になるまで、マンガとご縁がなかったわけです(笑)。 年喰ってから読み出したせいか、買うほど気に入るのは、ストーリーや登場人物がしっかりと 作られている作品に偏ってますが。(ユーモアは好きですが、ギャグマンガはどうも・・・)

『MASTERキートン』
『パイナップルARMY』
『瞬きもせず』
『ラヴァーズ・キス』
『メッシュ』
『はみだしっ子』
『動物のお医者さん』
浦沢直樹
浦沢直樹
紡木たく
吉田秋生
萩尾望都
三原順
佐々木倫子
『南京路に花吹雪』
『Shang-hai 1945』
『セルロイド・ドリーミング』
『ロリータの詩集』
『甲子園の空に笑え!』
『笑う大天使』
森川久美
森川久美
森川久美
山中音和
川原泉
川原泉

『MASTERキートン』全18巻 浦沢直樹 小学館ビッグコミックス
大学時代に入っていた考古学のサークルの部室で、最も良く読まれていたマンガ(笑)。
かつて英国特殊空挺部隊(SAS)に所属、現在は考古学の講師兼保険の調査員という主人公。生存術のエキスパートで、その技術を生かした活躍があるわりに、本業の考古学では万年講師だったり、別れた奥さんのが出世してたり。確かにあんまり世渡り上手そうなタイプじゃないですけど、そのギャップがなかなか面白いキャラクターです。
考古学の話題がよく登場するのもさることながら、保険の調査員もやってるということで、ミステリ風の話が多いのも個人的にはお気に入り。

考古の世界にも国際問題の影響はあるとかで、中東なんかだとアラブを掘った人はイスラエルを掘れなくて、イスラエルを掘った人はアラブを掘れないんだなんて話を聞いたことがありますね。
『パイナップルARMY』全8巻 浦沢直樹 小学館ビッグコミックス
主人公は元傭兵の戦闘インストラクター、ジェド・豪士。
プロの軍人さんが主人公ですから、戦争の場面も良く出てくるのですが、敵をやっつけてめでたしめでたし、の話にならないところがさすが浦沢作品。
人間の描写が読ませますし、ボディーガードならぬインストラクターということで、依頼人自身が基本的に自力で窮地を脱しようとするトーンのストーリーが多いのもけっこう好き。

余談ですが、もっぱらブックオフで読んでた頃の名残で、この本読み出すと、頭の中でBGMの「Loveマシーン」が回り出すという・・・(笑)。
『瞬きもせず』全7巻 紡木たく 集英社マーガレットコミックス
買った目的は、山口弁を懐かしむため、だったりする(笑)。
山口県の架空の市を舞台にした(中央市なんて市も、豊央高校って高校も実在はしません)、高校生の恋愛物語。
・・・いくら田舎が舞台とはいえ、今時の高校生、こんなに純情でしょうか・・・
わりと大人しめの女の子に(物陰からそーっと見てるタイプですね)、サッカー一筋の男の子という組み合わせ。少女マンガの王道としてはこれでいいのかもしれないんですが、正直言ってじれったい!
7巻もあるにしては、全4巻の『ホットロード』の方が長いような気がする、というのが正直なところだったり。
文庫版をぱらぱら読んでみたら、ラストのところがちょっと変更してありました。
『ラヴァーズ・キス』全2巻 吉田秋生 小学館別コミフラワーコミックス
吉田秋生作品でこれだけが手元にある理由。唯一登場人物が死なない!(・・・)
ええ、絵も好きだし(『BANANA FISH』途中からの、ですけどね)、甘ったるくないストーリーも好きだし、人物設定の巧さも好き、なんですが。
いかんせん、『BANANA FISH』にしろ『YASHA』にしろ、思い入れて描いたであろう登場人物を、ばっさり殺せる方なんですよね・・・。感情移入した登場人物が殺されるの知ってて、または殺されるかもしれないと思いながら読むのって・・・かなり心臓に悪いんですが。(『BANANA FISH』についていえば、番外編のしょっぱながアッシュとショーターの出会いの話っつうのは・・・)

ま、もっとも、人が死なないとはいえ、高校生の恋愛を描いた作品にしてはこちらも相当ハードな内容ではありますが・・・。
『メッシュ』全3巻 萩尾望都 白泉社文庫
SFものを描く人というイメージが強く、何かの折に手に取った「ポーの一族」があんまり趣味に合わなかった(はっきり書いてしまえば分かんなかった)こともあって敬遠してたんですが、これだけリアルな現代物を描く方でもあったんですね。

物語はパリを舞台にした心理ドラマ。
二歳の時に母親が駆け落ち、十二歳になって髪の両脇に混じりだした銀髪(「二色毛」という通称の由来。母親がつけたのはフランソワーズ・マリー・アロワージュ、と揃って女名前)が証拠になるまで父に実子であることを疑われ、スイスの寄宿舎で育った少年メッシュが主人公。
家を飛び出し、怪我をした彼が、贋作画家のミロンに拾われたところから始まり、全編を通してかなりシリアスなストーリーになっています。母親と再会するラストの「シュールな愛のリアルな死」も「瞼の母」にすらなっていないというか。

登場人物の心理描写が丁寧で、重くはあるけれど全く救いのない話にはなっていないあたりが好きです。
『はみだしっ子』全6巻 三原順 白泉社文庫
厳格すぎる父親の元から逃げ出してきたグレアム、母親の夢のため捨てられた私生児アンジー、母親の死のショックで喋れなくなり、地下室に閉じこめられていたサーニン、先妻が押しつけていった子供と疎まれていたマックス、の4人の少年たちの放浪の物語。
気楽に読み流せる冒険物語、なんてものではなく、ギャグ一辺倒の番外編で息抜きしてたんじゃないかと思えるくらい、人物も事件もものすごくリアルで、結構重たい、いろいろ考えさせられる作品ではあります。第一話のハイテンションぶりにちとつっかえましたが。

「バイバイ行進曲」での和解しない父と子とか、綺麗事でまとめてしまわず、こうあるべき、という建前では拾いきれない部分の感情を書き込む筆力がすごい。
確かにラストの終わり方、「よく分かんない」のですが、あそこまでグレアムが暴走してしまったあとなのだから、かえって器用にまとめられた方が嘘くさいですし・・・。

ちなみに4人の中で私が一番ひいきだったのは、多分一番人気薄なんであろうサーニン君でした。割と独立独歩で、言動を裏読みしなくてもいいところが(笑;恐竜が好きってとこもかな)。
『動物のお医者さん』全8巻 佐々木倫子 白泉社文庫
ご存じハスキー犬ブームと北大獣医学部ブームを巻き起こした作品。個性豊かに描かれた動物たちがおもしろくて、なんてことを今更私ごときが書くまでもないですね。

解説にいうところの「わずらわしい人間関係」を描かなくても、これだけ学生たちを個性豊かに描けるのは、やっぱり一緒に実験やって泊まり込んだりする理系学部だからなんだろうな、と、大教室の法学部なんかよりはこぢんまりしてるとはいえ、ゼミにしろ何にしろ基本的に個人作業、の文学部出身者は思ってみたりします。現実の学生生活は、マンガみたいにさっぱりとはいかないんだろうけど(笑)。

そして、社会人になってから読んで一番実感できるのが「だってアタシなんか実験の手をとめてお茶出しにいってるのよ〜」という菱沼さんのセリフだったりする。「お茶お願い」で仕事中断させられるの、給料もらっててもイラっとするんだから、学費払ってる身ではなおさらかと(笑)。
『南京路に花吹雪』全3巻 森川久美 白泉社文庫
戦前の上海が取り上げてられているときいて手に取った作品。歴史物には点が辛くなる自覚があるので(苦笑)、それほど期待して読み始めたわけでもなかったのですが、「歴史」と正面から取り組んだ、 とても読み応えのある作品だったのでした。

親中派の大佐によってよって組織された特務機関「54号」を舞台に、日本と中国が戦争に突入するのを食い止めるべく行動する人間たち。
とにかく、歴史に翻弄される人間たち、のリアリティがすごい。(「こんな立派な日本人もいました」に逃げてると感じさせないのが特に)
敵であるジョーの設定にも、ラストでうなりました。

直情径行の本郷さんもかっこいいですが、やっぱり黄子満のキャラクターが印象的。飛び込んでゆく本郷さんと、否応なしに巻き込まれていく黄、の対比が緊張感のあるストーリーの柱になってるような気がします。
(本郷さんも「やがて歯車にまき込まれて押し潰される……… 無駄な戦いを戦っているだけだ」と言える人ではありますが。)
信じる理想のために一途に闘うことのできない人間の哀しみ、の描写が、アンジェイ・ワイダの映画「灰とダイアモンド」に通じるような、などとも思ったり。

「蘇州夜曲」もディテールを拾っていくと好きな場面も多いんだけど、「南京路」を読んでしまうと、やっぱりストーリーとしては“架空の話”になってしまってる感じがします・・・。
『Shang-hai 1945』全2巻 森川久美 角川書店あすかコミックスDX
「中国三部作」のラスト。なかなか読めなくて、ネット古本屋でやっと入手できました。
「南京路」のような密度の濃いストーリー展開はないですが、考えてみれば「南京路」の時はジョーという明確な敵があったし、歴史の歯車を逆回しするようなものだと分かっていたにせよ、まだ戦争を食い止めるために行動することができた。
戦争は始まってしまい、しかも敗色濃く、負けて終わるのを待つしかないような時代では、すべきことを見つけられずにもがいてるような本郷さんを描くことになってしまうのも仕方が無いんでしょう。
本郷さんの相方が水上ってのも、黄に比べるとキャラ弱いですしね・・・。

しっかし、「なんか描く機会がないまま・・・諦めよう」なら、戦後の本郷さんの構想があるなんてあとがきなんかに書かないで黙ってて! と思ってしまった私(苦笑)。有田さんの消息は一行ばかり出てきたし、黄が消息不明なのは物語の都合上仕方が無いとして、尹編集長は? 紅雪美は? 本郷さんのお母さんは無事だったの? ってただでさえ気になってんですから・・・

余談ですが、「蔡文姫」に三国時代の詩人の名前を使ってるのは分かりますが、ダンナ役の「李光裕」・・・これもどっかで聞いたような名前のような・・・
『セルロイド・ドリーミング』全2巻 森川久美 角川書店あすかコミックスDX
マンガ喫茶で読んで激しく気に入り、以後根気よく古本屋を探したものの花とゆめコミックスでは1巻が見つからず、諦めてネット古本屋で全集版を入手。

返還前の香港を舞台にした全4話。登場人物は元ストリート・キッズのシャノン、彼を拾って育てたライターのリュウ・ホーロン、チェン財閥の御曹司・チェン・リーレンなど。シャノンが脇役になってしまっている第1話がいまいち収まりが悪いような感じもしますが・・・(続く3話では主人公なので)。
日中戦争とか文革とか、過去の歴史が描かれてたりして、結構シビアなストーリーなのですが、おっちょこちょいで人のいいシャノンのキャラクターが救いになってます(リュウならずとも)。

とりわけお気に入りなのは第2話の「上海灘(シャンハイビーチ)」。『南京路』の番外編でも思いましたが、こういうお互いの気持ちがストレートに届かないラヴ・ストーリー、しみじみ巧い! 
『ロリータの詩集』全3巻 山中音和 白泉社花とゆめコミックス
無口で愛想なし、クラスにつるむ友達も持たない女の子、という少女マンガの王道を行かない主人公のキャラクターがすごく新鮮だった作品。
一話ごとにいろいろな人間と知り合っていくという展開なのですが(個人的には「鴉」の神原くんが好きでした;笑)、「人と人とは器用につき合えないもんだよ」(先輩のセリフ)ってとこが丁寧に描かれているのが好き。

とりわけ印象的だったのが「学校民族」。
「どーしてみんな学校行くんですか?」との主人公の問いに答えた先生のセリフが「他に行く所ないから」。
学校ってこういう場所だよね、って説明が何かすごく的確で、ナルホドと思ってしまいました。

しかし、またなんでこのタイトルなんでしょうか? ゆいちゃん、ニンフェットって柄じゃないし・・・(つーか、好きなコミックとして名前を挙げにくいんで;苦笑)。
『甲子園の空に笑え!』 川原泉 白泉社花とゆめコミックス
多分唯一お気に入りの野球マンガ。
いや、『メイプル戦記』も嫌いではないんだけど、舞台がプロ野球で対戦チームの選手にモデルがいる分、どうしても「いたなあ、そーゆー選手」と余計なことを考えてしまって、単純に楽しめないので(笑)。

部創立以来の悲願は「地方大会1回戦突破」、部員は9人、迎えた監督は生物の新任女性教師、という豆の木高校野球部の“怪”進撃。
全編を貫く熱血スポ根へのアンチテーゼぶりが大好き(笑)。
「思いっきし打ちまくってガキ共を駆けずり回らせるのもいいうさばらしになるしな」
などとのたまう監督の名字に“広岡”とつけるセンス、最高!
『巨人の星』へのコメントなど何度読んでも笑えます〜。
『笑う大天使』全3巻 川原泉 白泉社花とゆめコミックス
お嬢様学校・聖ミカエル学園に通う、猫かぶり三人娘(笑)のお話。
化学実験室の掃除中、混ぜた薬品を吸ったら怪力少女になってしまうとか、その力を生かして誘拐犯人と闘うとか、ストーリー自体はリアリティなんてものを完全無視(笑)。
でも、三人が猫かぶってる状況のリアルさには、なにか人ごとでないような、共感できるところがあったりするんですよね。
ラスト3作のしみじみしたトーンもなかなかいいです。

全体のトーンはほのぼのしてるんだけど、よく読むと結構スルドいこと書いてるな〜という感じの話が多い川原作品。どっちかというとぼーっとしていて、それでも根っこのところはしっかりしてる、そういう主人公が多いのも好きです(笑)。

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