“あなたの予想をきっと裏切る意外な結末――驚嘆必至”てな惹句がついていたんだそうですが。
・・・確かに騙されました。それも、何と申しましょうか、目隠しされて手を引かれて歩いていたら、頭をしたたかにどこかにぶっつけて、「痛!」って目隠しをとってみたらそこは壁だった・・・、そんな感じ。
絶対騙されないぞ! って気合いを入れて読むミステリ読みもいるのかもしれませんが、私なぞは「やられた!」の爽快感を味わいたくてミステリを読むわけですよ。でも、このミスリード、相当後味が悪い。これを書いた当時作者が弱冠20歳だったと聞けば、そりゃもう、えらいもんだの一言なわけですが、この構成で、「反則!」と思わせずに完成度高いミステリとして書こうと思ったら、相当な小説技術が必要だと思うんで、ちょいとチャレンジャー過ぎだったんじゃないでしょうか。伏線無さすぎだし。担当さん止めなかったのかなあ。
あと、私はミステリというよりはラノベ風ファンタジーのつもりで、「なんて素敵にジャパネスク」みたいな感覚で読んでいたので、文体も台詞回しも、こんなもんでしょって感じで結構楽しめましたが、「松本清張賞」受賞作だというのを真に受けて読んだ人は、そりゃあ怒るでしょうねえ。
以下にネタバラシ疑問いくつか(マウスで反転すると読めます)。
えーと、花街から赤ん坊を買ってきて養女にするのは駄目、とかかいてある割には、白珠の祖母は花街の遊女だそうなんですが、あせびには登殿資格が実は無かったってオチなのですけど、白珠はOKって、宮烏ハーフは駄目だけどクオーターならOKなんですかね???
そもそも東家の娘(浮雲)が東家の当主の妻になるって、それって一体どういう親戚関係なのだ? 一族で通婚していたら、別の弊害が出てきそうだけど、それは無視していい世界なのかしら。
あと、藤波があせびを「おねえさま」と呼んでやたらと肩をもってるんですけど、真赭の薄は実の従姉妹ですよね。兄の若宮と真赭の薄は幼い頃に交流があるのに、藤波とは完全没交渉だったんでしょうか? あせびの母が藤波の羽母だったといっても、あせびの母って早逝したんですよね? あせびも母のこと大して覚えてないみたいだし、一体どこで仲良くなったのやら。
宝物庫であせびが会ったのは、多分今上陛下その人なんだろうけど(だから年齢に関しての描写がないのね)、「浮雲が無くなったので、仕事が楽になりました」の意味が最後まで分かりまへん。