猫は名探偵

リリアン・J・ブラウン   Lilian Jackson Braun
猫の名探偵といえば、赤川次郎さんの「三毛猫ホームズ」がよく知られていますが、 こちらは三毛猫ならぬ“シャム猫”の名探偵が活躍するシリーズ。
本名カウ・コウ=クン(13世紀の中国の画家の名前だとか)、通称ココ、性別雄。 いかに空腹でも生肉なんぞには見向きもせず、大好物のグレープジュースも最上のしか 口にしないというグルメ猫ではありますが、「ツバメ」で遊ぶのを喜んだり、「ミンティ・マウス」 にキックを喰らわせたり、と猫らしい遊び好きなところも持ち合わせています。 (さすがにマージャンはやらないらしい;笑)
ワトソン役を務めるのは、刑事ならぬ新聞記者、ジム・クィララン。パイプ党、アルコール はやらずもっぱらトマトジュースを飲んでおり、奇妙な感覚を感じ取れる口ヒゲをお持ちです。

 『猫は手がかりを読む』

〈デイリー・フラクション〉紙に職を得たクィラランだが、全く畑違いの美術担当に回されてしまう。紙の専属美術評論家マウントクレメンズは、容赦のない批評記事で町の大多数の美術関係者を敵に回していた。マウントクレメンズ邸の一階に落ち着いたクィラランは、町の芸術家たちを取材してまわるが、そんなとき、画家を妻に持つ町の画商が殺されるという事件が起きる・・・。

第一作ですから、ココはマウントクレメンズの飼い猫として登場。新聞の見出しを右から左へ読むという特技を披露してくれます。
余談ですが、パイナップルって雄雌で味が違うんですか? 初耳です。


 『猫はソファをかじる』

美術担当から、今度はインテリア雑誌の編集に回されてしまったクィララン。創刊号で翡翠のコレクションのある家を紹介したところ、翌日、その紹介したばかりの家から 高価な翡翠がごっそりと盗まれてしまった・・・

今回は、分厚い大辞典での単語ゲームで手がかりを示唆するココ。
クィラランの上司がライカ、インテリア・デコレイターがライクで別のデコレイターのアシスタントがライト、翡翠の収集家がテイト、読んでるうちにこんぐらがってしまったのを白状します(笑)。


 『猫はスイッチを入れる』

麻薬中毒者がたむろする街と思いこんで取材に行こうとしたジャンクタウンは、実はアンティークショップが軒を並べる通りだった。もともと骨董品は大の苦手のクィラランだったが、とりあえずオークションを取材してみることにした。しかし、そこに出品された品物を扱っていたディーラーが事故死した、という事情が俄然クィラランの興味を引き・・・

前作の最後で初登場した雌のシャム猫ヤムヤムが、本格的にレギュラーメンバー入り(笑)。
読んでいるとアンティークってのも面白そうですね。やみつきになる人の気持ち、ちょっと 分かるかも。


 『猫は殺しをかぎつける』 

医者に減量を指示されたにもかかわらず、グルメ記事の担当になってしまったクィララン。 ある屋敷でのディナー会の席でかつての恋人に再会した彼は、裏手に彼女の陶器工房がある その屋敷に引っ越すことにした。が、まもなく夫と不仲だったらしい彼女は行方知れずに なってしまったのだ・・・

今回はタイプライターの使い方を覚え、タイプを打って手がかりを示すココ。
体重計にのるクィラランの後ろで、こっそりココが足を踏ん張って目盛りを上げるシーンには笑わせてもらいました。


 『猫はブラームスを演奏する』 

3カ月の休暇をとったクィラランは、猫たちをつれて母の親友が所有するキャビンに滞在することにした。一見平和な田舎町ピカックスだったが、ココの発見したテープには犯罪をうかがわせる伝言が録音されていた。知り合った元警察署長は地元で見逃されている犯罪をひそかに調べている様子だったが、翌日、撲殺されて発見された・・・

ファニーおばさんという人もなかなか個性が強く、慣れない田舎生活にはまごつくし、と のんびりする予定のはずが、執筆予定の小説もなかなか進まないクィララン。
そして、ココはかかってきた電話に出るようになってしまいました。 さすがに人間語は話せないようですが(笑)。

シリーズ作品リスト        訳者:羽田 詩津子 ハヤカワ・ミステリ文庫
『猫は手がかりを読む』
The Cat Who Could Read Backwards
1966
『猫はソファをかじる』
The Cat Who Ate Danish Modern
1967
『猫はスイッチを入れる』
The Cat Who Turned On and Off
1968
『猫は殺しをかぎつける』
The Cat Who Saw Red
1968
『猫はブラームスを演奏する』
The Cat Who Played Brahms
1987
『猫は郵便配達をする』
The Cat Who Played Post Office
1987
『猫はシェイクスピアを知っている』
The Cat Who Knew Shakespeare
1988
『猫は糊をなめる』
The Cat Who Sniffed Glue
1988
『猫は床下にもぐる』
The Cat Who Went Underground
1989
『猫は幽霊と話す』
The Cat Who Talked to Ghosts
1990
『猫はペントハウスに住む』
The Cat Who Lived High
1990
『猫は鳥を見つめる』
The Cat Who Knew A Cardinal
1991
『猫は山をも動かす』
The Cat Who Moved A Mountain
1991
『猫は留守番をする』
The Cat Who Wasn't There
1992
『猫はクロゼットに隠れる』
The Cat Who Went Into The Closet
1993
『猫は島へ渡る』
The Cat Who Came To Breakfast
1994
『猫は汽笛を鳴らす』
The Cat Who Blew The Whistle
1994
『猫はチーズをねだる』
The Cat Who Said Cheese
1996
『猫は泥棒を追いかける』
The Cat Who Tailed A Thief
1997
『猫は鳥と歌う』
The Cat Who Sang For Bird
1998
『猫は流れ星を見る』
The Cat Who Saw Stars
1999

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