Working Woman

スー・グラフトン    Sue Grafton
主人公キンジー・ミルホーン。32歳、独身。離婚歴2回。カリフォルニア州サンタ・テレサで私立探偵事務所を経営。元ガレージのアパートに一人暮らし。(ちなみに家主のヘンリー・ピッツはセクシーで魅力的な“81歳”。このキャラクター、大好きです;笑)ペットなし、鉢植えなし。子どもなし。親兄弟なし。
サラ・パレツキー作の女性探偵V・I・ウォーショースキーとよく比較される存在ですが、個人的な好みをいえば、“社会派”で熱血型のV・Iより、肩肘張らず、クールでシニカルなキンジーの方が好きなので・・・。

育ててくれたおばさんゆずりの「ピーナッツバターとピクルスのサンドイッチ」というのが時々出てくるんですが、あれ、どんな味がするんでしょうか? (作って試してみればいいんだけのことなんですけどね;苦笑)

余談ながら、ローレンス・ブロックの『泥棒は野球カードを集める』を読んでたら、「Zまで進んでアルファベット使い切っちゃったらどうなるの?」というネタのジョークが登場しておりました(笑)。
シリーズ作品リスト        訳者:嵯峨 静江  ハヤカワ・ミステリ文庫
『アリバイのA』
“A” is for Alibi
1982
『泥棒のB』
“B”is for Burglar
1985
『死体のC』
“C”is for Corpse
1986
『欺しのD』
“D”is for Deadbeat
1987
『証拠のE』
“E”is for Evidence
1988
『逃亡者のF』
“F”is for Fugitive
1989
『探偵のG』
“G”is for Gumshoe
1990
『殺人のH』
“H”is for Homicide
1991
『無実のI』
“I”is for Innocent
1992
『裁きのJ』
“J”is for Judgement
1993
『殺害者のK』
“K”is for Killer
1994
『無法のL』
“L”is for Lawless
1995
『悪意のM』
“M”is for Malice
1996
『縛り首のN』
“N”is for Noose
1998
『アウトローのO』
“O”is for Outlaw
1999
『危険のP』
“P”is for Peril
2001

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フランセス・ファイフィールド   Frances Fyfield
主人公ヘレン・ウェスト。独身。離婚歴1回。公訴局に務める刑事弁護士。(イギリスには検察という制度がないため、訴追も弁護士がやるのだそうです。)仕事のできるプロフェッショナルぶりがかっこいいです♪(笑)。
作風は社会派で、児童虐待(というよりは放任?)が影を落としているなど、テーマとしては重いのですが、シニカルかつユーモラスな描写のため、あまり重苦しくなく読めます。登場人物一人一人の描写もリアルかつ丁寧で、小説としてもよくできています。
ヘレンと第一話で知り合うベイリー警視との仲はこの先どう描かれていくのか? という点も興味深いところ。安直なハッピーエンドにはならないのは確実ですし。

 『愛されない女』

弁護士の妻が惨殺された。犯人として逮捕されたのは、弁護士に執心していた未亡人の雇った 私立探偵。彼は未亡人に殺人を依頼されたことを自供するが、彼女はそのことを否定する・・・

というわけで、犯人も殺人の方法も冒頭から明かされています。かといっていわゆる倒叙ものというのともちょっと違いますし、法廷ものでもない。オーソドックスなミステリーの型には全然はまらないんですが、登場人物の掘り下げが興味深く、一気に読めてしまいました。どういう結末で終わるんだろ、という興味が引っ張ったことも否定はしませんけど(笑)。


 『別れない女』

森に埋められていた女性の死体が発見され、被害者と恋仲だった娘の家庭教師が容疑者として 逮捕された。しかし、別れ話を持ち出して彼女と喧嘩し、殴りつけたことまでは認めたものの、 男は犯行は否認し、凶器のナイフも未発見のままだった。ベイリーの転勤を期に、共同生活を始めたヘレンだが、容疑者が今つきあっている女性と親しかったことから、警察の捜査と対立することになると知りつつ、自分の担当外の事件に探りを入れ始める・・・

前作とは異なり、一般的なフーダニットの作品になっています。ラストは前作より重いですが・・・
作文に入れられた妙に冷静な添削が、読んでて恐かったです。
本筋とは関係ないですが、ヘレンが買い物をする場面が笑えました。女の買い物が時間がかかるのって、万国共通なんでしょうか(笑)。

シリーズ作品リスト        訳者:猪俣 美江子 ハヤカワ・ポケットミステリ
『愛されない女』
A Question of Guilt
1988
『別れない女』
Trial by Fire
1990
『目覚めない女』
Deep Sleep
1991
『逃げられない女』
Shadow Play
1993
『汚れなき女』
A Clear Coinscience
1994

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マーシャ・マラー    Marcia Muller
主人公シャロン・マコーン。ハンク・ザーンの経営する《オール・ソウルズ法律家協同組合》の専属捜査員(給料が安いので、個人の事件依頼も引き受けている)。ショショーネ・インディアンの血が八分の一混じっていて、兄妹の中では一人だけインディアン的な顔つき(兄2人、妹2人の5人兄妹)。チョコレート中毒で鳥恐怖症(鳥と一緒にバスルームに閉じこめられてパニックになるシーン、ありましたね)。
パレツキー作のV・I・ウォーショースキーやグラフトン作のキンジー・ミルホーンに先行する、女性の手になる初めての女性探偵なのだそうです。個人的には、パレツキーやグラフトンより話がすっきりしてて読みやすいような気がして気に入ってます。

 『タロットは死の匂い』

アパートの隣人モリーが何者かに絞殺された。現場は物取りの犯行らしく荒らされていたが、金目のものに手をふれた様子はなく、彼女自身は占い師に相談した結果を気にしていたという。離婚後アパートに転がり込んで酒浸りになっている親友リニアに悩まされつつ、シャロンは捜査に乗り出すが・・・

カバー後ろに「LAを東奔西走して事件を解決する」とありますが、シャロンのホームグラウンドは今のところサンフランシスコであります。捜査のために出かけるのはオークランドだし。ついでに言えば、「シリーズT」と銘打たれてはいるものの、実質的にはシリーズ2作目(1作目絶版。このシリーズで改訳はなし?)。
占い師による死の予言、てとこで一瞬『ロウソクのために一シリングを』を連想してしまいました。もちろん同じ手ではありませんでしたが(笑)。
余談ですが、タロット・カードというのは本来「タロー・カード」が正しいのだそうです。


 『チェシャ猫は見ていた』

ヴィクトリアン・ハウスの塗装を手がけていた友人ジェイクが殺された。 あざやかな色と込み入った模様が特徴のため、ハウスの保存運動をめぐって確執があったことは確かだが、動機はそのことに関係があるのだろうか? 3年前に起きた殺人事件の手がかりでもあるランプ〈チェシャ猫の眼〉を追うシャロンだったが・・・

前作同様、すっきりした筋立てに重すぎない内容で、一気に読めました。
建築様式についてはあんまり詳しくないですが、サイケ調のヴィクトリアン・ハウスってのは・・・個人的にはあんまり見たくないような(笑)。
前作でチョコレート攻勢をかけていた、グレッグ・マーカス警部補との喧嘩友達にして職業上のライヴァル、という微妙な関係も健在です。


 『安楽死病棟殺人事件』

有名な写真家が、突然連絡を絶ったルームメイトの捜索を依頼してきた。郷里の母親は、彼女が訪ねてきていたことを認めたが、それ以後の彼女の足取りは全く途切れていた。手がかりを求めて、彼女がソーシャルワーカーとして勤務していたというホスピスの調査を始めたシャロンだったが・・・

終末期医療や安楽死、といったテーマが扱われてはいますが、それほど掘り下げられているわけではありません。物足りないようでもあり、深刻にならない分読みやすいようでもあり。
原題の「暗闇を遠ざけるゲーム」はホスピス・タイドプールズを評したウェイトレスの科白に登場する言葉ですが、我々みながそうしているのでは、というシャロンの感想、ちょっと身につまされるところがありますね・・・

シリーズ作品リスト        徳間文庫
『人形の夜』
Edwin Of The Iron Shoe
訳:小泉喜美子
〈講談社文庫〉
1977
『タロットは死の匂い』
Ask The Cards A Question
訳:深町 眞理子
1982
『チェシャ猫は見ていた』
The Cheshire Cat's Eye
訳:大村 美根子
1983
『安楽死病棟殺人事件』
Games To Keep The Dark Away
訳:広津 倫子
1984

Leave A Message For Wille

1984
『ダブル』
Double
〈プロンジーニとの合作〉
訳:木村 二郎
1984

There's Nothing To Be Afraid Of

1985

Eye of The Storm

1988
『殺意の日曜日』
There's Something In A Sunday
訳:小尾 芙佐
1989
『カフェ・コメディの悲劇』
The Shapes Of Dread
訳:大村 美根子
1989
『奇妙な相続人』
Trophies And Dead Things
訳:広津 倫子
1990

Where Echoes Live

1991

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T・J・マグレガー    T.J.MacGregor
スプラッタ嫌い、サイコもダメ(コーンウェルの『検屍官』シリーズがあまり好きでないのはサイコキラーばっかり出てくるせいもある)な管理人。 なのによくついてけたなあと我ながら不思議です(笑)。なんたってサイコ・サスペンス、映像だったら5分で退散間違いなし・・・ってシーンがてんこもり。
耐えられた要因は、主人公の飼ってるペットがスカンクってのが新鮮だった(空き巣を撃退するシーンあり;笑)のと、心理描写の丁寧さでしょうか(その分、そこまで懇切丁寧にスプラッタシーンを描写してくれなくていい! にもなるんですが;苦笑)。

主人公アリーン・スコット。フロリダのタンゴ・キー警察署殺人課刑事。物価の高いタンゴ・キーでは二足の草鞋を履かないと生活できないのだそうで、ホイットマン書店のオーナーでもあります(もちろん実際の経営は共同所有者のフィンリーがやっている)。

ちなみに作者はクィン&マクレアリの夫婦探偵シリーズに専念するようで、こちらのシリーズは4作で完結(?)の模様だとか。

 『イヴのすべて』

弁護士クーパーが首なし死体となって発見された。現場に駆けつけたアリーンは第一発見者の妻・イヴを見て愕然とする。恋人マーフィ刑事がまだ忘れかねている亡き妻・モニカにそっくりだったのだ。まもなくマーフィも現場に到着する・・・

いきなり事件の1カ月後、イヴが監禁されているところが始まりで、1カ月の時間差をおいて二つのストーリーを展開させるという凝った構成。
事件の捜査と並行して、イヴに惹かれていくマーフィ(もちろん、莫大な遺産を相続するイヴは有力な容疑者でもあり、ただではすまんわけですが)、恋人が離れていってしまったことを認めつつも気持ちを切り替えることができないアリーンに、アリーンの親友で同じく殺人課刑事のバーニー、私立探偵キンケイド、などがからみ、恋愛小説としても結構読み応えのあるストーリーになっています。


 『針のたわむれ』

判事一家が惨殺される事件が発生した。目撃者らしい少女が保護されたが、ショックで口が利けない。捜査を開始したアリーンのもとに、ある夜、電話がかかってきた。聞こえてきたのは事件の最中に録音されたらしい内容だった・・・

今度の凶器にはハットピンなんかが登場(どういう使われ方かは・・・書きたくない・・・)。
本作ではキンケイドから飛行機の操縦を習うアリーンですが、「マイル・ハイ・クラブ」の話はフランシスにも出てきた記憶が(『飛越』だったかなあ・・・)。
さらに余談ですが、鈴木孝夫さんの本で「オレンジ色の猫」って話を読んだことがあるんですが、フランス語だけじゃなくて英語でも「オレンジ色」で茶色まで含むんですね。

シリーズ作品リスト        訳者:古賀 弥生 創元推理文庫
『イヴのすべて』
Tango Key
1988
『針のたわむれ』
Fevered
1988
『うつろな月』
Black Moon
 
『堕ちたきらめき』
High Strangeness
 

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キャロリン・G・ハート    Carolyn G. Hart

 『死者の島』

旧知の情報産業界の大立者の頼みで、彼の所有する島にやってきたヘンリー・O。「誰かが自分を殺そうとしている。容疑者を島に集めたので誰が犯人かを見つけて欲しい」と頼まれ、気が進まぬながら調査を始める彼女だったが・・・

主人公は元新聞記者で現在はミステリ作家、キャリアを積んだ行動派の60代。
ジャンルでいえば「孤島もの」ということになるでしょうか。ハリケーンに襲われ、全員が邸宅の屋根に追いつめられていくクライマックスの描写が迫力十分(ヘビまで避難してくるし・・・)。真相もなかなか凝っています。
毒が仕込まれていたというのが亀の形をしたマジパン。1個や2個ならともかく、1箱なんてごめん蒙りたい、と私などは思うのですが、西洋人には好物なんだとか。これ、材料がアーモンドですから当然アーモンドの匂いはするはずなので、苦アーモンドの匂いってのはまた別の匂いなんですね。


 『優雅な町の犯罪』 

ヘンリー・Oが休暇を楽しんでいた友人マーガレットの山荘に、深夜の侵入者があった。男はマーガレットの甥のクレイグ。自宅で妻が殺されており、慌てて逃げ出してきたのだという。無実を主張する彼のために、彼女は調査に乗り出すのだが・・・

舞台になるのはテネシー州の架空の町、フェア・ヘイヴン。事件が起きた家に滞在し、荒らされたキッチンを片付け、被害者パティー・ケイが冷凍庫に残した料理を食べながら、ヘンリー・Oは小さな町ゆえの複雑な人間関係を調べてゆきます。浮かび上がってくるのは、楽しむことが好きで、勇敢で、行動力があり、その分他人への洞察力に欠けたところもあった女性像。
自分が正しいと思うことをしたために殺された女性へのヘンリー・Oの共感が、しみじみと感じられるラストです。

シリーズ作品リスト        訳者:仙波 有理 ミステリアス・プレス
『死者の島』
Dead Man's Island
1993
『優雅な街の犯罪』
Scandal in Fair Haven
1994
 
Death in Lovers' Lane
 

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デイナ・スタベノウ    Dana Stabenow

 『白い殺意』 

捜査の際に負傷して検事局を退職、生まれ故郷のアラスカの村で隠遁生活を送っているケイトのもとを、かつての上司ジャック・モーガンとFBI捜査官が訪ねてきた。国立公園のレインジャーが行方不明になり、その捜査を任せた検事局の捜査官までが消息不明になってしまったのだという。気が進まぬながら調査を引き受けた彼女だったが・・・

ケイトが退職するきっかけになった事件もハードですが、結末はさらにハード。探偵のタフぶりを描こうとすると、こういう事件になるんでしょうか・・・。もっとも、ジャックを始めレギュラーとおぼしき登場人物とケイトのやりとりはなかなか辛めのユーモアが効いていて、楽しく読めましたが。
ハスキー犬のマットを相棒に調査に当たるケイトは、アラスカ先住民のアリュート人という設定。アラスカという土地柄が詳細に描かれているのも興味深いところで、アリュート人というアイデンティティにこだわる祖母エカテリーナとケイトの対立などもなかなかシリアスです。


 『雪どけの銃弾』 

ニニルトナの村で、大量無差別射殺事件が起きた。ケイトの住むキャビンに向かった犯人は逮捕され、一件落着かと思われたのだが、数日後、被害者の一人リザだけが、別のライフルで殺されていたことが判明した。検事局の依頼で調査を始めたケイトだったが・・・

射殺犯を取り押さえ(実際のお手柄はマットですが)、最後には真犯人を追ってビッグ・バンプ (山の名前)へ。今度も行動派のケイトのキャラクターがよく出たストーリーです。ポトラッチという部族の祭りで踊るシーンなんてのも描かれていたりしますが。
そして、さらに意外な一面が描かれているのはジャック。「おっと、駄目だよ。後片づけくらいやらせてくれよ」と手際よく後片づけをしてくれる上、チョコレート・チップと胡桃でクッキーを焼くシーンがあるのです。いくら「キッチンという特殊分野でジャックの手に負えるのは、せいぜいそのあたりまでだった」のであるとはいえ、こういう男の人っていいなあ、と思いながら読んだのでした(笑)。

シリーズ作品リスト        ハヤカワ・ミステリ文庫
『白い殺意』
A Cold Day for Murder
訳:芹澤 恵
1992
『雪どけの銃弾』
A Fatal Thaw
訳:芹澤 恵
1993
『秘めやかな海霧』
Dead in the Water
訳:翔田 朱美
1993

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