とっても楽しい初の生舞台鑑賞だった昨年のスポレート歌劇場来日公演の「セビリアの理髪師」。この
スポレート歌劇場、今年もシラグーザとバルチェッローナをソリストに「チェネレントラ」で来日とのこと。・・・どうせ二人揃えるのは東京だけなんでしょ? (去年のガナッシはそうだった)なんて思ってたら、なんと今年は二人とも名古屋に来てくれるというじゃありませんか! 喜びのあまりつい気が大きくなって、先行予約でS席を申し込んでしまい、おまけに同行者まで確保してしまったんでありました。
行くのを決めてからさあ予習、というのが今までのパターンでしたが、この演目はそれまでに2種類映像を見てました。実は、シラグーザが王子様役をやっているジェノヴァ公演のDVDが欲しくて(継父役がご贔屓ブッフォのアントニオッツィだし)、輸入盤しかないのなら、英語字幕でも理解できるようにちゃんと予習しとかにゃ、と思ったのがそもそもの動機だったんですが。
最初に見たのが、世間では定番とされている、バルトリがタイトルロールの
1995年ヒューストン公演の映像でした。・・・なるほど面白い演目だというのはよく分かりました。でも、即決で買う! となるほどお気に入りにはならなかったのが正直なところでして。
? と思ったのが、実はタイトルロールでした。
バルトリ、YouTubeで見てて、評判の割にぴんとこない・・・なんて思ってたのですが、この映像を見終わる頃には確信に変わっちゃいました。耳当たりがキツいんです、この人。変な言い方ですが、うんと低い音の出るソプラノを聴いているような気分になりまして。どうも私の耳とは決定的に相性が悪いようです。巧いことは認めるんですけどねえ。歌の問題はさておいても、何だかアンジェリーナにしては強すぎるような気がいたします。どうみても継父より義理の姉より(王子より)強そうです。こき使われてる雰囲気がまるっきり無いというのはいかがなものかと。
ドン・マニフィコは
ダーラ。面白さに不足はないのですが、没落貴族らしいリアルな見栄っ張りぶりと、意地の悪さがあんまり出てないのが個人的にはちょっともの足らず。コルベッリのダンディーニも面白かったのですが・・・偽でもなんでも、あれが王子? 何なんですかあの白塗りは。メイクの違和感が強烈すぎ・・・。
ヒメネスのラミロは悪くなかったです。パルマの「理髪師」映像では老けた伯爵で閉口しましたが、こちらはちゃんと優しそうな王子様で、最初見た時びっくりしたほど。映像で見た中では一番ちゃんと王子様してると思います。どうも私の耳にはアジリタが少々もたついて聞こえるのと、時々目をひん剥くのが気になりましたけども。
ダントツでよかったのは
ペルトゥージ演ずるアリドーロ。歌唱は迫力があってすばらしいし、長身で威厳があって役にどんぴしゃ。立ち姿の格好いいこと! この後いくつか映像を見ましたが、この人のが断然一番だと思います。
次に見たのが
ポネル演出の映画版。タイトルロールの
フォン・シュターデが凄い美人! こんな綺麗な人もいるんですね〜(
フィナーレのシーン)。まさにスクリーンにはうってつけ、と思ったら、どこかにオペラ歌手離れした美貌、とか書いてあって思わず吹きました。声も断然バルトリより好み。ただ、歌い回しも演技もちょっとか弱すぎじゃ・・・と最初見たときは思いましたが、過ぎたるはなんとやらで、まだ控えめな方がこの役には合ってるのかなあ、という気がだんだんしてきました。下手するとラストが厭味な優等生になりかねないし。いろいろ考えると、結構匙加減の難しい役ですね。
しかし、アンジェリーナがここまで美人だと、どうしても王子役が気になります。
アライサのラミロ、何か視覚的に違和感があるというか、デズデーリのダンディーニの方が王子に見えるんですけど。あ、王子に見えるとはいっても、戯画調の王子なので、ダンディーニとしてはこれで正しいと思います。王子様らしいとからしくないとかいうんじゃなくて、何か別物に見えるんですよね。・・・昭和の時代の青春ドラマの主人公に(汗)。だって熱血青年だし、詰め襟着せたら似合いそうだし・・・。
モンタルソロのマニフィコ、いやあ面白かったです。背が高いので没落貴族にはうってつけ。適度に意地悪で見栄っ張りで間抜けなオヤジぶり。最初もう少し重い声のが好みなんだけど、なんて思いましたが、見ているうちに、その役者っぷりに引き込まれました。
2つめのアリアでお神輿みたいに担がれるシーンが好きですね〜。ダンディーニとの二重唱での
空気椅子にも爆笑でした。
ほかのキャストも良かったです。
デズデーリのダンディーニは達者だし(
登場シーン)、姉二人も結構可愛らしいです。その分イジワル度は控えめですが、下品になるよりはいいし、アンジェリーナがか弱い分バランスはとれているような。アリドーロがボロ着で戻ってこないのと、アリアをロッシーニのそっくりさんに歌わせるのが違和感ありましたけど。ここだけ露骨に、あ、吹き替えね、って感じになっちゃうのがちょっと興ざめでした(え、まさか一人二役?)。さすがにもともと映画として作られただけあり、カメラワークは抜群、
「絡み合った結び目」の六重唱をシルエットにしちゃうようなアイデアもあって、映画仕立てが成功している映像ではないかと思います。日本語字幕が無いけど、DVD、買っちゃおうかしら(LDの日本語字幕にすっごい誤訳があったし〜)。
ところで、ご贔屓テノールの
ロックウェル・ブレイクも、ラミロを歌ってる映像(非正規)があります。YouTubeに結構いろいろアップされてるんですが、なんか舞台姿が王子っぽくないので、これはパス、と思っていたのですが、しばらく経ってから、見たかった
見せ場のアリアをアップしてくれる人があったんです。ハイCの長のばしを決める王子の横で、
コルベッリのダンディーニがストップウォッチ持って計ってるのが思いっきりツボでして(笑)。アンジェリーナ役の
ジェニファー・ラーモアの早口がなかなか耳に心地よいのに気付いたこともあって、やっぱり全部見たい〜と注文してしまいました。
予想に違わず、一番コメディーに徹した舞台で、抱腹絶倒しながら楽しんだのがこの
1996年ガルニエ公演の映像。意図的に世間に流布している「シンデレラ」をパロった場面が受けました。馬車が出てくる代わりにヒロインがカボチャ持って走るし、腕輪ならぬ靴を脱ぎかけるので、アリドーロが「靴じゃない、腕輪!」ってやるし。オランジュの「ホフマン物語」でオランピアの後ろに巨大人形を並べたサヴァリが演出とあって、大分シュールの入った舞台でもありましたが(洗濯ロープにはお人形さんがつるしてあるし・・・)。さすがに非正規映像、音と映像がちと悪かったのが残念です。
ヒューストンの映像のヒメネス王子は、コルベッリに存在感で負けてた気配があって、入れ替わりはおしまいだ! のあたりでようやく一矢報いてた感じでしたが、
ブレイクが王子だと、なかなかいい勝負。こちらの
コルベッリはハンカチ王子ならぬアメ玉(ボンボン?)王子。メイクがあれほど強烈じゃないので普通に見てられるのですが、ええ加減にせんかいと注意に来た本物王子の口にも、そのアメ玉を放り込んじゃって。鳩が豆鉄砲を食ったような王子の顔に思わず爆笑。アンジェリーナが舞踏会に連れて行ってと頼む場面でも、思わず身を乗り出す偽従者を、お前は引っ込んでろと押し返す偽王子。王宮で、頼んだ仕事をやってきたまえ、と偽王子が偽従者を下がらせると、偽従者、外から鍵かけて偽王子と姉二人を監禁(笑)。漫才コンビのような楽しい主従です。王子とダンディーニの二重唱なんぞ、それこそボケの偽王子とツッコミの偽従者のどつき漫才にしか見えません。その後の姉二人を加えた4重唱でもノリ良すぎの偽従者(笑)。最初変装用かと思った王子の眼鏡、ほんとに見えてない演技なので、ははあド近眼王子ですか、と分かったのですが、あれも「私には眼鏡など必要ない」ってダンディーニのセリフから作った設定なんでしょうねえ。
ラーモアのアンジェリーナも気に入りました。早口やアジリタが耳に心地よいというのが、私にとってはポイント高いです。演技もなかなかお茶目で、こちらも好印象。「あなたは誰?」と王子に訊かれて答える場面、緊張のあまり自分でも何喋ってるんだか分からなくなっちゃった・・・って演技は、これが一番しっくりきました。王子の眼鏡外して、あ、見えてなーい、なんてやっちゃう場面もありましたが。
最後の難曲アリアも、随分茶目っ気たっぷりに歌ってくれました。こういう演出なら、ラーモアとブレイクのキャスティングが大正解でしょう(笑)。しかし、も少し美男美女に見えるメイクにできなかったものかとは思いますが・・・。
姉二人の演技はいささかやりすぎな気もしますが、主役二人にあれだけコメディーやらせてるとなると、このくらいにしないとバランスとれないかも。クロリンダが登場するなり前後開脚やってくれたのにはびっくりしました。
個人的にミスキャストだったのはドン・マニフィコ。
カルロス・ショーソン、アーノンクール指揮の「フィガロの結婚」のタイトルロールと、同じくチューリヒの「理髪師」のバルトロで見てるんですが・・・。正直、何見ても笑えません。やっぱりブッフォは笑いがとれてなんぼだと思うんですけど。目をつぶって声だけ聴きたいというほど好きな声でもないし。特に一番笑いをとらなきゃいけないマニフィコがこれってのは・・・。こういう路線の演出なら、それこそダーラのマニフィコがぴったりなのに、と思っちゃいましたです。
微妙だったのがアリドーロ。マドリッドの「理髪師」でフィガロ歌ってた
スパニョーリなんです。フィガロにしても、これでバリトン? と思った細い声。バスのアリドーロなんて論外〜! ・・・と予想したよりは声は出てる感じでしたが・・・。でも、いかに上手に歌っても、これはバリトンの役では無いと思います。随分軽いアリドーロにしている演出でしたが、だからって声も軽くていいってことには・・・。役作りとしては悪くなかったですが。
さて、発売元がTDKなので、国内版は出るの? 出ないの? ってところで手を出しかねていた
2006年ジェノヴァ公演の映像。
シラグーザは来年の新国にもこの演目で来るので、来日記念で出すかも・・・などとも思ったのですが。クリエイティブ・コアが5月に「チェネレントラ」を発売するというので、お、と思ったら、Opus Arteから出ていたグラインドボーン公演のじゃないですか。さすがにたまりかねて問い合わせなんぞしてしまったら、当面国内版発売の予定は無いんだそうです。というわけで諦めて購入しましたよ・・・。
演出はこれが一番好きかも。カラフルでスタイリッシュな舞台です。適度に現代的で、お知らせを持ってくる騎士たちは自転車で登場するし、アンジェリーナを迎えにくるのは自動車。嵐の場面で、アリドーロの指図で擬音装置が使われてたのが個人的に面白かったです(チェスキー・クルムロフのバロック劇場で見せてもらったので)。
一番納得したのが娘二人とマニフィコの関係。1番目のアリア、マニフィコのたれまくる文句を、二人とも全く聞いちゃいません。まるっきり無視しておしゃれに夢中。最後のアリアでも、マニフィコの一人芝居の間に、もう放っとこ、って感じで、二人とも出てっちゃいます。そりゃあ年頃の娘だったら、オヤジなんてうっとうしがるのが普通であって、これがリアルな親子関係だよなあ、といたく納得。姉二人の、綺麗だけど頭からっぽ、って感じも一番イメージ通りでした。さすがに最近の録画とあって、クロリンダの方、アップにすると少しお年が見えちゃいましたけど。
アンジェリーナは
ガナッシ。スカラ座の「理髪師」のロジーナがすっごい貫禄で閉口したので、おっかなびっくり見ましたが、まずまず可愛らしいアンジェリーナで一安心。まあ、どうみてもマダムの貫禄ではありましたが・・・。演技で1カ所気になったのが、王子にマニフィコの悪口をぽろっと言っちゃう場面。すごい憎たらしい! って表情で、これじゃあ百年の恋も冷めやしない? と思っちゃったので。あと、これはガナッシの責任でも、演出家の責任でもなくて、文化の違いだからしょうがないんですが・・・。フィナーレの衣装、三角形のティアラだったんです。白の衣装でおでこには三角形・・・、はい、柳の下にでてくるモノに見えちゃうんですよねえ・・・(苦笑)。
ダンディーニは
ヴィンコ。王子より頭一つ大きい長身なのにちょっとびっくり(ヒメネスとコルベッリ、アライサとデズデーリは同じくらいだったし、ブレイクとコルベッリではブレイクのが長身だったし)。さすがにデズデーリやコルベッリの後で見ると、芸達者という域ではないような気もしますが、十分合格点のコミカルな偽王子でした。これまたアップになると汗びっしょりが映っちゃったりして・・・。
オルフィラのアリドーロ、良かったです〜。やっぱりアリドーロはこれでなくちゃ、という朗々と立派な声。
アリアの後は大喝采。一番拍手もらってたんじゃないでしょうか。長身で立ち姿にも威厳があって役にぴったり。ただ・・・、これは演出の問題だと思いますが、アップにするとめちゃくちゃ若いんですよ。どう見ても王子よりアンジェリーナより若いだろ! って感じ。うっかりすると王子よりアリドーロのが素敵じゃない? なんて思っちゃいそうなので、せめても少しおじさま風のメイクにするべきだったと思います。何せ、この髪型だと、体型も似ているダンディーニと外見がかぶりますし・・・
お目当てその1の
アントニオッツィのドン・マニフィコ。久々に達者なお笑いを堪能しました。衣装メイクともに、ちゃんと没落男爵に見えたのも良かったです(笑;
ダンディーニとの2重唱)。2つめのアリアの酔っぱらいぶりが一番楽しかったかな。口でワインボトルのコルク栓抜いて飛ばしてました。ただ・・・1曲くらいはまともに歌ってくれないかしらんと思ってしまったのも事実。3つめのアリアは内容が内容だから、声色つかっても違和感ないけど、全部にこのへんてこりんな声使われると、いくらなんでも飽きますわ。重めの声で達者な早口というところが私は好きなのですし。
お目当てその2は
シラグーザのドン・ラミロ。ディスクで見るのは初めてですが、やはり癖のない明るい声。正直、とっても好みの声、とは言い難いのですけど(もともとレッジェーロ系は全滅だし)、これが実演で聴けるんだ〜、と楽しみにするには十分でした。
しかし、シラグーザの「チェネレントラ」はCD(相手はカサロヴァ)もDVDもあるのに、フローレスの市販ディスクって無いんですね(当時;リセウの映像がDVD化)。ちょっと意外。
とまあ、いろいろ映像見ながら公演を楽しみにしていたのですが、直前になってアクシデント発生。バルチェッローナが膝を怪我して来日を断念というのです。
残念は残念でしたが、「理髪師」は伯爵が主役だけど、「チェネレントラ」の主役はアンジェリーナなんだから、やっぱり一流のロッシーニ・メッゾのがいいわよね、くらいの感じで、もともと期待に温度差があったのは事実。これがシラグーザのキャンセルだったら大ショック間違いなしでしたけど。もともと東京にしか行かなかったと思えばいいや、と割とあっさり切り替えられたのですが。(膝が悪いってのは不便なもの。早いご回復をお祈りします。)
代役の方は、この役は去年ドレスデンでも歌ってるそうで。ん? 去年のドレスデンて、ご贔屓メゾさんがこの役歌うっていうんで、30秒ほど追っかけを検討しましたよ、私。ダブルキャストだったのかな? (実は一瞬、代わりにボニタティブス来ないかなあと思っちゃいました。実際に代役務めたこともあったそうなんで。ロンドンでケルビーノやってる時だったから絶対無理なんですが。)
初日の大阪公演を見に行った方から、なかなか楽しい舞台でしたよ〜、とうかがい、それを楽しみにして行くんだからいいのよ、と思っちゃいたのですが。次の上野では序曲でブーイングとの話。代役さんの評判は上々・・・の反対。その分シラグーザが頑張ってアンコールまでしてくれたというけれど、日程は結構キツめで、こちとら行くのは最終日。疲れが出ない? 大丈夫? なんてかえって心配になるというもので。というわけで、楽しみが3分の2、野次馬根性(どれどれ、そんなにひどいの?)6分の1、残る6分の1が不安(同行者に退屈されたらどうしよう)、という感じで
愛知県芸術劇場まで行って参りました。そういえば、美術館やライブラリーには何度も来てるし、コンサートで来たこともあったと思うけど、ここでオペラ見るのは今回が初めて。
アンジェリーナ:カルメン・オプリシャーヌ
ドン・ラミロ:アントニーノ・シラグーザ
ダンディーニ:ガブリエレ・リビス
ドン・マニフィコ:ルチアーノ・ミオット
ティズベ:レベッカ・ロカール
クロリンダ:ルツィア・クノテコヴァー
アリドーロ:カロージェロ・アンドリーナ
アルレッキーノ:フランチェスコ・ヴォルフ
コロンビーナ:イレーネ・レポレ
指揮:ジュゼッペ・ラ・マルファ 演出:アレッシオ・ピッツェック
そういうわけで、主役登場のひと歌いを一番ドキドキしながら待ったのですが・・・え、そんなにヒドイ?
とっても好みの声。それに、なんていうか、歌が良かったです。確かに重唱になると・・・聞こえない? だし、テクニックの点でハラハラするところは多分にありましたが(それはロッシーニ・メッゾとしては致命的なんだろうけれども)、“Una volta c'era re”と“Ah signor”をあれだけしっとりと聴かせてくれれば、私としては文句なし。最後のロンドはやっぱり、頑張れ! って思っちゃったところもありましたが、よく歌ってたと思います(どのみち、一流のメッゾでも私の耳に心地よく転がしてくれる人は滅多にいないので、もともとここは期待してなかったし;爆)。
難しいとこだと思ってた役作りの匙加減も、控えめながら可愛らしいアンジェリーナでこちらも大満足。出されたドレスを見ての、わあ、って表情がなんとも可愛らしくてぴったりでした。随分と綺麗な方で、バルチェッローナより容姿はぴったりじゃないかとひそかに思ったくらい。
というわけで、個人的には
オプリシャーヌさんにはbrava! を差し上げたいです。同行者も「メゾソプラノさん良かったわね〜」って真っ先に言ってましたし(事前に代役だと念を押しまくったせいだと思いますが;汗)。
疲れを心配した
シラグーザですが、何のことはない絶好調♪ 一人だけ格が違うというか、安定感抜群。張りがあってよく通る声にひたすらうっとりと聞き惚れました。
2幕のアリアでは最後のハイCをオケの最後までのばして、もちろん大喝采。ま、東京ならぬ名古屋だ、さすがにアンコールは無いだろな、と初めから思ってたし、十分堪能できたから無理しなくていいよ〜、てな気分だったのですが、え、合唱団員呼び返してる・・・? なんとなんと、やってくれたんですよ〜! 「アリガト」はこっちのセリフですがな。2度目はカデンツァつけてハイDまで上げてました。女装の合唱団員と手をとって踊っちゃうサービスつき。
ダンディーニ、去年のバルトロが印象的で、今回も評判良かったモンタナーリを期待したのですが、別の人。ちょっとがっかりしたのですが、あら、なかなか立派な声。低音陣では一番好みの声じゃないですか。早口もなかなか達者で気に入りました。柄でもない役を押しつけられて、勘弁してくださいよ〜、って演技だったのが、初めっからノリノリの偽王子を見慣れた目にはかえって新鮮。これでも結構笑えるんですね〜。後半も芸達者で楽しかったです。「従者のダンディーニです」でカツラとっちゃうシーンが一番うけたかな。
昨年同様、基本的にはオーソドックスながら、楽しめる演出だったと思います。舞台もなかなか綺麗でした。「絡み合った結び目」の六重唱でほんとにぐるぐる巻きにしちゃうのが面白かった。嵐の場面、ジェノヴァのDVDに出てた擬音装置が出てくるのも、あらあらって感じで楽しかったです。姉二人の扱いはちょっとやりすぎじゃない? と思わないでもないですが、笑いがとりやすいのは事実か・・・。アリドーロの連れてた道化コンビがちょっくらうるさいとこがあったのと、合唱団員の一部が女装してたのが意味不明、あと娘が3人いるだろう、のシーンで、アリドーロがボロ着のまんまだったのが違和感ありましたけど。
オケの音のことはよく分からないのですが、1カ所出だしで? と思ったところがあったので、詳しい方が聴けば、さぞかし・・・だったんでしょうが、ちゃんと曲にノれるテンポで私は違和感なく聴けました。アンサンブルもよく揃ってたと思います。歌手も皆さんノリノリで、去年に引き続いて、一生懸命楽しませてくれようとしてる感じが良かったです。「アト3プンデ」「アト3プン?」とか日本語で笑いをとる場面もあり。「わしと結婚したいのか?」まで日本語で頑張ったマニフィコさんに拍手(笑;字幕のおかげで分かりましたけど)。
カーテンコールでは、シラグーザに投げられた花束が、ステージまで届かずにオーケストラボックスに落下、とか、オプリシャーヌさんは本日お誕生日だったようで、Happy Birthdayが飛び出すサプライズもあり、なんだかほのぼのしました。
期待したのはノリがよくて生き生きと楽しい舞台、でしたから、それはもう大満足! S席とはいえ3階席2列目だったのですが、中央だったので(前が空席だったし!)実に舞台がよく見えました。オペラグラスなしで字幕が読めたの初めて。もっとも、これだけ事前に見てったら、アリアの時なぞ字幕なんか見ちゃいませんでしたが、レチタティーヴォにカットが少なかったですよね? あれ、こんなセリフあったっけ? という場面が割とあった(アリドーロの「天気も味方だ、細工が自然になる」みたいなのとか)ので、自然に字幕が見れたのは楽でした。
去年の浜松は、時計を気にしながら職場を飛び出し、帰りはぎりぎり午前様、余韻に浸る暇もなく翌日仕事、でしたけど、今回は終演後に同行者と一杯楽しむ余裕もあり、ふわふわと幸せな気分で帰宅しました。
地下街に向かう途中で、後ろの会話が聞こえちゃいましたけどね。「でも、女の人のが大きかったわね」。・・・やっぱり言われてら。ダンディーニと凸凹コンビになるのはDVDで見慣れてましたけど、ガナッシとはまあまあ釣り合ってましたからね。でも、バルチェッローナだったらもっと差がついたのよ・・・。