Opera DVD Collection

DVD

ナタリー・デセイ  「奇跡の声」

ボストリッジの情報求めて、柄にもなく(笑)クラシック系のブログなんかも読みに行くようになった私。そのうちの一つで絶賛されてたのがこのDVDでした。美人で演技派、そして歌も良しと聞けば、それは興味を引かれます。いきなりオペラの全曲版にはさすがにちと手が出なかったですけど、これは映像によるアリア集という感じで、ドニゼッティからリヒャルト・シュトラウス、バーンスタインまでいろいろ。好きな「魔笛」の夜の女王のアリアもあるし、これなら少なくとも一つくらいは好みに合いそうだ、と思ったところでCD版を試聴に行き、声がばっちり好みだったので購入に踏み切りました。
とりあえずは一通り通して見たわけなんですが、久方ぶりのオペラ映像鑑賞だったせいもあり、最初のうちは特にすごいとも思いませんでした。最初の「春の声」はこれを一週間で覚えたって! とは思いましたが、ご本人もおっしゃるとおりプロンプターに釘付けとあって、演技に目を奪われるってことはなかったし、ザルツブルクのツェルビネッタは、女二人だんだん意気投合していく場面が面白いなとは思ったものの、いいかげんはよ終わらんかしらん、てな気分になったことも事実。ガルニエのも同じく途中で集中力切れました。「リュシー」の狂乱の場はなるほど凄かったですが、見終わった後どっと疲れてしまって・・・。これは「ハムレット」でも同じで、どうやら私、“狂乱の場”ってやつも受け付けないようで。

そんなこんなで、初めてすっごい! と思ったのはバーンスタインの「着飾って、きらびやかに」でした。これガラ・コンサートなんで舞台装置も小道具も無し。なのに何この迫真の演技! 歌もすばらしいけど、登場人物がそこにいるとしか思えない演技力に目が釘付けでした。YouTubeで別バージョンも見ましたけど、断然こっちがいいです。最後の「天国と地獄」の二重唱はもう大笑いしながら見ました。「天国と地獄」つったらかけっこのBGMの定番くらいな印象しか無かったけど、こんな楽しい話だったんですね。
繰り返し見てるうちに「魔笛」の夜の女王もとっても気に入りました。エクスのはえらい老けたタミーノだな、とか、ガルニエのパミーナの髪の毛つかむシーン、レシュマンの鼓膜は大丈夫なんだろうか、とかいらんこと考えたりもするのですが(笑)。自動人形オランピアは3種類が収録。小柄な方なので、これが当たり役になるのも納得です。個人的にはオランジュのが断然お気に入り。前半のお人形さんの演技と、後半の子どもにしか見えないかわいい演技が両方楽しめるんで。でも最初見たときは後ろの巨大人形にまず目を奪われました(笑)。どうやって動かしてるんだろう?

こうなると気に入ったものについては是非とも全曲版を見てみたい、と思います。ところがですね、ここで直面せにゃならんのがフラストレーションのたまる事実。日本語字幕つきのデセイ出演のオペラの全曲版DVDって、精神病院バージョンの「ホフマン物語」しかないんです。同じ会社から出ていた「天国と地獄」もすでに廃盤。一時期アマゾンのマーケットプレイスに出てましたが、値段2万円ナリにびびってるうちに売り切れてしまいました。輸入盤はパソコンでしか見れないPALだし・・・。輸入盤で手にはいるのもトマの「ハムレット」くらい。うーん、これまたあまり食指が動かない。見たいなあと思ったガルニエの「魔笛」とオランジュの「ホフマン物語」、どっちもTV放映はされてたみたいなんで、運が良ければ見れるのかもしれないですけど・・・。
追記:ご厚意で録画をいただきました。そのうち取り上げる予定です。あとビリャソンと共演した「マノン」が出ましたね。やっぱり同じ会社同士だと早いなあ。しかしご贔屓二人とはいえ「マノン」・・・。当面やめときます。どうせ日本語字幕ついてないし。
追々記:「天国と地獄」、再発売されましたので購入。そのうち取り上げます。実はそのちょっと前に輸入盤のPALを買っちまってたんですが・・・(汗)。しかし、彼女の最高傑作だと思う「連隊の娘」ですら日本語字幕付く見込みないんですね・・・。


デセイのオランピア映像まとめリンク
1992年 バスティーユ ポランスキー演出
1993年 リヨン エルロ演出   その2   DVD収録 全曲DVDあり
1995年 スカラ座   その2
1996年 ウィーン セルバン演出 DVD収録
2000年 パリ・オペラ座 カーセン演出   その2
2000年 オランジュ サヴァリ演出   その2   DVD収録

チラシさて、DVDのブックレットに「07年11月にも再来日が予定されている」とあったので、ほんとに来るなら絶対行く! と楽しみにしておりました。しかし、半年も前からチケット取るなんてことに慣れていない私、当然のごとく出遅れまして、すでにC席もD席も売り切れ。致し方ありません、買いましたよ、B席10,000円。こんな高いチケット買ったの、生まれて初めてです(さらにこの上東京まで往復の新幹線代がかかるのよ〜)。さあ、何も予定入りませんように、と気が気でなかった半年間。その緊張がたたったか、なんと前日に体調を崩して半日寝込み、あわや自主キャンセルの危機。一晩寝たら回復して、予定していた友人とのランチも楽しめ、半端に時間が余ったので新宿駅からオペラシティまで歩いたりしちゃいましたが。

クリスマス・イルミネーションの建物をエスカレーターで上がると・・・すんごい人でした! さすがだあ、と彼女の人気を実感。
曲目は、
ヴェルディ「シチリア島の夕べの祈り」より“友よ、ありがとう”
ヴェルディ「椿姫」より“不思議だわ・・ああ、そは彼の人か・・花から花へ”
ドニゼッティ「ランメルモールのルチア」より“あたりは沈黙に閉ざされ”
ドニゼッティ「ランメルモールのルチア」より“狂乱の場”
間に序曲というプログラム。(オーケストラにゃろくに興味のない私。)
アンコールは、帰ってからWebで検索したところによると、プッチーニの「ラ・ボエーム」より“私が街を歩くと”とマスネの「マノン」より“ガヴォット”だったとか。

そりゃもう素晴らしかったです! ほとんど一番後ろの席だったんですが、しっかり弱音が聞こえるんですよ。情感が伝わってくるのなんのって!
でも、勢いですっとんでっちゃった去年のボストリッジと違って、こちとら1年間、いろいろ見たり聴いたりしちゃってます。勇ましい序曲に続いての“友よ、ありがとう”でまず思いました。実はこの曲、こちらでずいぶんと堪能してまして、ああ、あの曲が聴けるんだ、と楽しみにしてたんですが・・・う、オケ重い! 「ルチア」の“狂乱の場”だって、DVDであの壮絶な演技を見ちゃったら、そら普通に歌うコンサートはひと味足らないというか・・・。まあ、この曲、フルートの代わりに、当初の構想にあったグラス・ハーモニカと同様の音色を持っているヴェロフォンて楽器が演奏されてて、この独特な音色が聴けたのは面白かったですけど。これはフルートには出せないや、という曇った音で、曲の暗い感じにとても良く合ってました。私、この人の澄んだ高音がとてもとても好きなのですが、それが堪能できなかったのもちょっと残念でした。聞くところでは、やっぱり今回の公演、好調ではなかったようですね。
まあでも、彼女のDVDを見て初めて、オペラって面白いのね! と開眼した身ですから、生で聴けただけでも幸せってもんです。途中でドレスお着替えしてくれまして、前半は薄緑色、後半は薄紫でした。
 
終了後はサイン会。行列に並んで待ってたら、楽屋から出てきた彼女が思いっきり目の前を通過してテーブルへ。160cm(+ヒール3cm)の私の目の前にお顔がありまして、小柄なのを実感。それに顔ちっちゃ〜い! CD購入者のみ、という感じではなかったので、このDVDにサインもらってきました。(新CDはDVD付きのインターナショナル版を購入予定だったのでこの場では買わなかったのですが、DVDの中身はメトの「ルチア」の狂乱の場らしいと聞き、結局「奇跡の声」CD版を選んでしまった私。)“2c”ってサインするんですね〜。これはやっぱり“ドゥセー”と書かなきゃいけないのかなあ、と思いましたが、YouTubeでフランスのTV番組の録画を見ていると、“デセイ”って聞こえないことはない・・・。これはカタカナ表記としては誤差範囲のうちか、と思うことにしました。
それよか、誰も指摘しませんが、私はGruberováのカタカナ表記を見ると、伸ばすとこ間違ってない〜? ととっても気になります。スロヴァキア語でもアクセントついてるaの方を伸ばすと思うんですけど。

しかし、熱狂的ファンって、ちょっとずれてる人でもあるんだなあ、人気があるのも大変ね、とちらっと思ってしまった私です。そういう私も、しっかり握手おねだりしちゃったのでヒトのことはいえないんでありますが。

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