Art Mystery

アーロン・エルキンズ   Aaron Elkins
スケルトン探偵ことギデオン・オリヴァー教授のシリーズで知られるエルキンズですが、もう一つ、美術館学芸員クリス・ノーグレンを主人公としたシリーズがあります(ベン・リヴィアを主人公とした美術ものもありますが、今のところまだ第2作は出てないので;笑)。
オリヴァー教授のシリーズが三人称で語られるのに対して、こちらは一人称。語り手の主人公は学芸員に見られたことがないという34歳で、割とどこにでもいそうなキャラクターです。
オリヴァー教授のシリーズで形質人類学に関する専門知識が得られるのと同様、このシリーズでも絵画にまつわる専門知識が楽しめます。舞台になる土地が1作ごとに異なるのも同様。
それにしてもナチスの絵画略奪がからむ話が多いです。それだけ一大事だったんですね・・・
『偽りの名画』

出ていった妻との離婚調停が泥沼化し、意気消沈していたクリスは、ホワイトヘッド館長から、ヨーロッパで行われる〈略奪名画展〉の仕事を勧められた。ベルリンへ飛んだクリスは、上司である主任学芸員のヴァン・コートラントから、中に贋作のあることをほのめかされる。絵を見るために倉庫に入ったクリスは守衛ともども2人組の男に襲撃され、ほどなくヴァン・コートラントが謎の死を遂げたことを知らされた・・・

シリーズの第一作。ナチスによって略奪され、戦後アメリカ軍によって元の持ち主に返還された絵画 が扱われています。
「贋作」ということで、絵画の真贋を判断する方法がいろいろ登場。人間の目によるものからX線による鑑定まであるのだそうで、なかなか興味深いです。
とにかく最後の最後まで贋作がどれなのか分からず、かなりやきもきさせられました(笑)。


『一瞬の光』

複製画輸入倉庫でクリスが見せられた絵は、約2年前にボローニャで盗まれたルーベンスだった。展覧会の準備のためイタリアに向かおうとしていたクリスは、FBIの要請を受けたホワイトヘッド館長から、この事件に関係のありそうな話を聞き込んで、それをイタリア警察に教える仕事を命じられる。念願の絵画購入の予算を復活してもらう条件で、その仕事を引き受けたクリスだったが・・・

舞台はイタリア。というわけで捜査に当たるのは、カラビニエーリ(美術文化財保護特捜隊)の“ロンバルディアの鷲”ことアントゥオーノ大佐。薬物を追う麻薬取締捜査官みたいに、美術品の回収を第一の目的とする捜査組織があるんですね。シチリアに飛んで、マフィアに遭遇してしまう場面などもあります。
もっとも個人的には、クリスとアンがハーグで食べてるオランダ料理が一番印象に残ってたりして・・・
(オランダ旅行中、オランダ料理の店はとうとう見つけられなかったんですよ〜。パンケーキは美味しいの食べられたんですけど;笑)


『画商の罠』

ホワイトヘッド館長から、ディジョンの画廊主ルネ・ヴァシイから寄贈されるレンブラントの絵を受け取ってくるように命じられたクリス。寄贈主は一風変わったユーモアの持ち主で、一筋縄ではいかない人物である上、化学的検査を絶対に施さないことが条件に付けられていた。しかし、それでなくてもレンブラントの絵には贋作が多い上、問題の絵は骨董商から購入したもので、来歴も無いのだという。恋人アンとの約束をキャンセルする羽目になったクリスは、不承不承ディジョンに飛んだのだが・・・

この作品でもやはりメインは絵の真贋の問題。といっても自分の工房を持ち、弟子には自分と同じようなタッチで絵を描くように教育し、なおかつ弟子の絵で上出来なものには多少の加筆をして自分の サインを入れて売っていたというレンブラントの場合、ことはそう単純ではありません。
奇妙な条件をつけたヴァシイの意図は何なのか、かつてナチの協力者だったという噂もある彼はどの ような人物だったのか・・・なかなか容易ならざる謎です。そして今回も危険な目に遭うクリスなのでした(笑)。

シリーズ作品リスト        訳者:秋津知子 ミステリアス・プレス
『偽りの名画』
A Deceptive Clarity
1987
『一瞬の光』
A Glancing Light
1990
『画商の罠』
Old Scores
1993

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