Opera DVD Collection

ヨハン・シュトラウス2世  「こうもり」

シェーンブルン宮廷劇場来日公演(2010.6.5)追記しました。

チューリヒの「メリー・ウィドウ」の映像にぞっこんはまって、俄然期待がふくらんだ小澤征爾音楽塾の「こうもり」。ボー・スコウフスのアイゼンシュタインにギルフリーのファルケ。あの1幕の男二人のデュエットを、この二人で聴けるの!? と思ったあたりから常軌を逸したようです、私(苦笑)。最初ギルフリーの公式サイトでスケジュールを見た時には、名古屋にも来てくれるんだ〜、としか思ってなかったのですが、よくよく見たら浜松が日曜でびわ湖が土曜の公演。マチネなら在来線で楽に日帰りできる距離だし(どっちも行ったことがあるし)、この時期なら青春18切符が使用可能。これなら3公演、それほど財布(=電車賃)と体力に無理かけずに追っかけ可能じゃないですか! 同じ公演に複数回行けるチャンスなんて滅多にないわけですし(東京にしか来なかったら土日の1回でお終い)、ご贔屓歌手の初来日が大好きな演目、やっちゃお! と決めてしまったのでした。

しばらくしたら、音楽塾のサイトにキャスト詳細が載りました。ロザリンデはアンドレア・ロストこちらのインタビューを見たことしかありませんが(えー、この映像の真ん中へんにサイケ調パパゲーノが出てくるんです)、「椿姫」とか、タイトルロールでお客が呼べる歌手さんですよね。フランクのジョン・デル・カルロって、メトのライブビューイングの「セビリアの理髪師」のバルトロだったような(見てないですけど)。そしてブリント博士が、おお、フシェクールじゃないですか〜! デセイと共演の「天国と地獄」と「ホフマン物語」でちょっとだけ見たことがありますが、コミカルな演技が得意そうなのでとっても期待大。アイゼンシュタインとのでこぼこコンビ(だってこの人152cmですもの。ロストも同じくらいらしいですけど)が楽しみ♪ 豪華キャストにますます期待がふくらみました。

しかし、そこはやはりチケットとりに年季の入っていない私。初めてチケット発売開始日に買いに出かけたのですが、昼頃のんびり行ったら、名古屋とびわ湖はきれいに完売。とりあえず浜松公演を確保、予定変更して、翌日わずかに残ってた神奈川公演のチケットもゲットしたのですけど(三連休の最後だし、ついでに東京で遊んでこれるかな、と。)
職場のおばさま方が、ジャニーズのチケットとるのはファンクラブに入っててもなかなか難しいんだなんて話をしてるのを、他人事のように聞いておりましたが、いやはや、オペラのチケット手に入れるのにも、そのくらいの気合いが必要だったとは知らなんだです。出遅れたとはいうものの、デセイのリサイタルは、まだB席以上は買えたし、6月のチェネレントラだって、その時高い方の席ならまだ残ってましたし。でもまあ、考えてみれば、スコウフスやロストのファンがまず狙うだろうし、小澤征爾のファンだって買うだろうし、そもそも「こうもり」自体が人気演目ですもんね。

あまりに有名な序曲だけは以前から知っていましたけど、この演目に興味を持ったのは、デセイのDVDがきっかけでした。冒頭に収録されている「春の声」、これが「こうもり」の夜会のゲストとして歌ったものだということで、どんな話なのだろうと調べてみる気になりまして。そしたらなんだか楽しそうなドタバタ喜劇。こんな話なら見てみたい! と思って購入したのが、定番と思われるクライバー指揮の1987年バイエルン国立歌劇場公演DVD

・・・実は、チューリヒの「メリー・ウィドウ」より、先にこちらを見ていたのです。好みに合わなかったわけでもなく、それどころかとっても楽しめました。じゃあなぜチューリヒの方が先にお気に入りオペレッタディスクになってしまったかといえば・・・理由は、音。
演奏がどうとかいうのではなくて、単純に収録とかマスタリングの問題だと思うのですが、序曲に音量合わせると歌が聞こえない、慌てて音量上げる、今度はセリフが聞こえなくてさらに上げる、それで演奏になると、当然オケうるさい! いちいち音量上げ下げするのもめんどくさくて、いつもは歌が聞こえるくらいのところで聴くんですけど、字幕が出るからそう困らないんだけど、せっかくドイツ語なのにセリフが全然聞き取れないって、結構ストレスで・・・。なぜだかオルロフスキーのセリフだけはよく聞きとれて、初めて意味のある単語が聞き取れたのがロシア語の「乾杯!」でした(笑;私ロシア語知りませんが、チェコ語の「乾杯!」とほぼ同じでしたから)。

ま、なんだかんだいいつつ、見出すと最後まで見てしまう楽しい映像ではあります。とりわけ第1幕の男二人のデュエットは大好きで、二人で踊った挙げ句、アイゼンシュタインがソファに逆立ちしちゃうシーンが楽しい! アイゼンシュタイン役のヴェヒターが、ファルケ役のブレンデルと並ぶとちっと老けすぎなのがなんですが。ファスベンダーのオルロフスキーもエキセントリックなところが面白いです。3幕のフロッシュの一人芝居も爆笑だし。(フロッシュの飲んでるお酒、字幕は「焼酎」でしたけど、slivovice(チェコのプラム酒)なんですね。)

ちなみに、予習にもう一つ活用したのが、地元図書館に置いてあったクレメンス・クラウス指揮のCD(DVDから音だけ抜くのが面倒だったので。セリフは収録なしです)。モノラル録音だそうで、音はあまりいいとは思いませんが、さほど抵抗無く聴けました。ダントツで気に入ったのがアデーレ。ヴィルマ・リップという人だそうですが、可愛らしい歌い方がまさにぴったり! 笑い声をきちんと切って歌ってるところが好みです。

さて、ギルフリーの初来日を楽しみにしながら、動向を横目で気にしていたらば。3月のチューリヒの「インテルメッツォ」で、声がかすれた挙げ句にひっくり返ったというレビューを読んだと思ったら、6月のアムステルダムのメシアンも、“喉のトラブル”云々とやら(初日風邪声だったそうで)。何せこちとら、6月のチェネレントラで、初めてキャンセルとやらをされてしまったばかり。とにかく無事に歌ってよね〜、と祈るような気分で3連休、東京へ向かいました。もう一つ切に祈ったのが前日の好天でしたが、花火大会は無事開催(当日が予備日でした。一度行ったことがありますが、港の見える丘公園から港が見えなかったですから、かち合ったら帰りがオソロシイ・・・と危惧していたのです。)。当日もよい天気で、友人と中華街でランチしてから会場の神奈川県民ホールへ。

ロザリンデ:アンドレア・ロスト
ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン:ボー・スコウフス
アデーレ:アンナ・クリスティ
アルフレート:ゴードン・ギーツ
オルロフスキー公:キャサリン・ゴルドナー
ファルケ博士:ロッド・ギルフリー
フランク:ジョン・デル・カルロ
ブリント博士:ジャン=ポール・フシェクール
イーダ:澤江衣里
フロッシュ:小迫良成(神奈川・びわ湖)/大浦みずき(名古屋・浜松)
指揮:小澤征爾  演出:デイヴィッド・ニース

席は1階席の一番後ろ。でも真ん中あたりだったので、舞台全体はとてもよく見えました。隣が通路で圧迫感も少なかったし。残り数枚の時点で、滑り込みで買った席にしては、まあまあだったかな(パニクらせてしまったコンビニのレジのお姉さん、ありがとうごさいました)。ただ空調がなんか微妙で、途中暑くてアンサンブルの上着を脱いでしまいましたが。

第1幕 序曲と同時に幕が開くと、初演時のポスターらしきものを写しているらしい幕が1枚。この幕が上がると、2階建てのアイゼンシュタイン邸。アルフレートが窓の外で歌ってます。アデーレのところに郵便屋さんがお手紙を配達。へえ、おひねりやって追っ払わなきゃ、とか、ここにいるのはアデーレよ、なんてセリフあったんですね。なんとかお暇をもらいたいと、おばさんを病気にするアデーレ。泣きまね上手い(笑)! 派手に鼻をずーずー鳴らして会場の笑いを誘ってます。今日みたいな大変な日に駄目よ、とにべもないロザリンデ。
屋敷の壁には梯子がついていて、アルフレート、それを登って2階に入り込みます。 “Alfred!”“Son io!”(ってアナタたちナニ人ですか(笑)。いい加減にして、ってとこでロザリンデがBasta!とか言ってたし)・・・ここで客席から起きるくすくす笑い。あ〜っ、「椿姫」のデュエット! (ヴェルディ聴かない私にも分かったのは、この音声を愛聴していたおかげですが)。退場するアルフレート、vincero! vincero! って今度はトゥーランドットですか、と思ったら、オケまで鳴っちゃいましたよ! もちろん会場は大ウケ。

そこへブリント弁護士と一緒にアイゼンシュタインが帰ってきます。楽しみにしていた場面だったのですが、やっぱり面白い! まるでオトナとコドモじゃないですか〜。一旦弁護士追い出したところで、喉が渇いた、一杯くれ、とジェスチャーでアデーレに頼むアイゼンシュタイン。アデーレ、用意するのですが・・・グラス渡さないんですね〜(笑)。アデーレに上着ぶん投げるアイゼンシュタイン。そこへ、アデーレに目配せしながらこっそり書類鞄をとりにブリントが戻ってくるのですが・・・気付かれます。再び追い出した後、鞄を放り出すアイゼンシュタイン。また戻ってきて言い返すブリント。どもりの演技が面白すぎ!

赤の縁取りの黒の上着でファルケ博士登場。ロザリンデが二階に消えると、オルロフスキー邸の夜会に行こうと誘います。勝手知ったる他人の家、さっさとグラスに2杯ワインも注いじゃって。女の子も来るんだ。どうせビア樽みたいなのだろ。いや、“ネズミちゃん”だよ。じゃあこれの出番だな、と懐中時計を取り出すアイゼンシュタイン。ははあ、“ねずみ取り”だな。(ここではこうもり事件のいきさつはカットでした。そういや、Rattenfängerって、あの“笛吹男”のことなんですよね。)
階段のところに立って「一緒に夜会に行こう」とファルケが歌います(Rosenkettenのところで、アイゼンシュタインの頭の上で、くるっと手を回してました)。お、おい、そんなでかい声出したら上に聞こえるじゃないか、とアイゼンシュタインが気にしてるのがまた可笑しい・・・と思ったら、わあ、“Mit dir zu dem himmlischen Fest!”で、ドカドカっと胸を叩いちゃってますよ。ゴリラみたい(笑)。それでも躊躇するアイゼンシュタインですが、誘惑成功、 “Zum Teufel mit deiner Leimsiederei!”で二人がっちり握手。ガウンの裾を少し上げて、片足でリズムとりだすアイゼンシュタイン。二人前後に並んでテーブル一周(せ、狭い)、最後はダンスでポーズ決めてフィニッシュ!
・・・十分面白かったけど、もう少しはじけてくれるのを期待してたんですよ、実は。でも、よく考えたら、この二人が動き回るには居間が狭すぎか。これで椅子の上で逆立ちなんかしたら足がつっかえそう。

そこへ古着を持ってきたロザリンデ。ど、どうしたの。ファルケのおかげで元気になったよ、とアイゼンシュタイン、ファルケのおでこにキス。刑務所長のフランク氏によろしく言っておくよ、と出て行くファルケ。ファルケによると刑務所には服装規定があるそうだ、そんな古着はやめて、正装して行くよ! とアイゼンシュタイン。ハイテンションに歌いながら階段駆け上がってっちゃいます(笑)。
変ねえ、刑務所に行くのにはしゃいでる、と独りごちるロザリンデ。そこへぐすんぐすんと夕食持ってきたアデーレ、思いっきりテーブルにガチャーン! 「テーブルに置きなさい」言われても、次の料理をまたガッシャーン! さっきはロザリンデの手鏡をちゃんと持ってなかったし、なかなかやりますね、この娘(笑)。「お暇をあげることにしたわ。でも若くて元気なおじさんに会いに行くんじゃないの?」(予習で見た時は「いとこ」でしたが、確かにOnkelって言ってるわ。)「私が嘘をつく人間だとお思いですか」「そう思うわ」どっとうける会場内。

そこへばっちり正装したアイゼンシュタインがLaLaLa〜と歌いながらノリノリで登場。アデーレに念入りにコロンを吹きつけさせ、夕飯も食べず、行ってきまーす。ロザリンデ、燕尾服のしっぽつかんで引き戻します(笑)。「8日間もあなたなしで過ごすなんて」・・・アイゼンシュタイン、早く出かけたくてしょうがないって顔。「辛くてたまらない」の、歌詞と裏腹な陽気なメロディーにかかると、片足つま先立ててリズムとっちゃってます。転調して元の暗〜いメロディーに戻ると、今度はアイゼンシュタイン椅子に押し倒して、上から自分が座っちゃうロザリンデ(笑)。でまた例の箇所にくると、今度はアイゼンシュタイン、両足つま先でリズムとって、アデーレと踊った上にお尻にタッチ、アデーレはキャーッ。アイゼンシュタイン、自分で自分の手、ぺちんと叩いてました(笑)。 アデーレからコートとステッキと帽子もらって身支度のアイゼンシュタイン。シルクハットの中から白いマフラーを引っ張り出すのですけど、8割方出したところで、帽子の中をひょいとのぞき込むんですよ。え、なんか出てくるの? と思わせといて、普通〜に首に巻いちゃいました(笑)。
アイゼンシュタインの後ろから、でっかいトランク持ったアデーレが出て行きます。ははあ、あの中身がロザリンデのドレスですか。

一人残されたロザリンデのところに、アルフレートが再びやってきます。アイゼンシュタインのガウンを着込み、一杯やりだすアルフレート。アルフレートが2階の寝室に上がったところで、アイゼンシュタインを連行に、刑務所長のフランクがやってきます。夫はここには・・・。2階からはノーテンキなアルフレートの歌声。2階に上がったロザリンデ、「Mamma Mia!」(笑)。続いて上がってきたフランクと、アルフレート仲良く一杯。では行きましょうか、ぼくはアイゼンシュタインじゃないよ。ここは夫のふりをして、とロザリンデ。どういうことだ? とフランク。
「何ですって、私が浮気をしているとでも?」のびをしたりあくびをしたり、ロザリンデの指示通りにお芝居するアルフレート(笑)。ロザリンデのかぶせた帽子の房が顔の前にくるのを、後ろに吹き飛ばそうとフーフーやってたのが笑えました。結局帽子を後ろに回してましたが、手ではねのければ良かったんじゃないの〜? それでは別れのキスを、とフランク。どうしてもというなら・・・って、人差し指一本、間接キス〜(笑)! しつこくロザリンデに迫るアルフレートですが、フランクの部下2人に拘束されてしまいます。アルフレートが連行されていくのと入れ替わりに、郵便配達さんがロザリンデに手紙と箱をお届け。ん、あれが招待状?

第2幕 幕が上がるとお屋敷の外壁と出入りするお客。その外壁の幕が上がって大広間。おやおや、なんだか東洋風の格好をした人もいるじゃないですか。衣装の色遣いもあんまりヨーロッパ風という感じしなくて、ふと鹿鳴館なんか連想した私でした。
手紙なんか出してないわよ、ってイーダとアデーレのやりとりはそっくりカットされてたのですが・・・あれれ、ファルケが「オルガとイーダです」ってオルロフスキーに紹介してるじゃん。いつの間にアデーレがオルガになったの?(オルガの名前で招待する、とは招待状には書いてなかったですよね)。ここだけちょっと唐突で引っかかりました。
オルロフスキーの「ぼくはお客をもてなすのが大好き」、退屈してるお客はつまみだしてやる、のくだりで、合唱団員(かな?)が一人突き飛ばされまして、ファルケがキャッチ。退散しようとするアイゼンシュタインを、ファルケが引き戻してます。続いてビンを頭に叩き付けてやる、のくだりで、わ、ホントにビン投げてる! 見事アイゼンシュタインの頭上を通過して、またファルケがキャッチ。歌の前にもオルロフスキーにさんざウォッカを飲まされてたアイゼンシュタイン、今度はファルケにも飲まされてました(笑)。
アイゼンシュタインが例の時計持って女の子にちょっかいかけてるところへ、財布の中身を使い果たしたアデーレとイーダが戻ってきて・・・上がる悲鳴。オルガさん、いつもそのお名前で? 侯爵様もいつもルナール侯爵なの? と逆襲するアデーレ。「うちの小間使いにそっくりで」とアイゼンシュタインが言うと、アデーレ優雅に気絶してます(笑)。「侯爵様のような方なら」では、ちょっかいかけるアイゼンシュタインにアデーレがいちいちひじ鉄喰わせるのがまた笑えて。
そこへシャグラン卿ことフランク登場。オルロフスキーに紹介されてなぜかくしゃみを連発。お互いフランス人てことになってるアイゼンシュタインと似非フランス語でやりとりをするのですが、これがもう爆笑。「ラ・フランス〜」で、仲良く「ラ・マルセイエーズ」を鼻歌デュエット、「ブイヤベース」「マヨネーズ」「サルゴジ」「ディジョン」「ナポレオン」「ムーラン・ルージュ」「ノートルダム」で今度は「天国と地獄」のカンカンを踊っちゃってますよ〜。
実はもう一人お客様がとファルケ。いらっしゃるまで皆様お庭を散歩されてはいかがですか、というので一同ぞろぞろと退場。悪党め、うまく騙されてくれよ、とファルケが独りごちると、そこへハンガリーの侯爵夫人に扮したロザリンデ。刑務所にいるはずのご主人が見られますよ。何、アデーレまでいるじゃないの!
アイゼンシュタインとフランクが戻ってきます。おやあれがハンガリーの侯爵夫人、とフランクが近寄ろうとするのをアイゼンシュタインが止めまして、10分で彼女を口説いてみせますよ、と豪語、フランクとファルケは退場します。怒り心頭のロザリンデに、いつもの懐中時計を取り出すアイゼンシュタイン。この時計をロザリンデの頭上でくるくる回して・・・目が回った、って感じで座り込むロザリンデ(上手い持って行き方ですね!)。結局まんまとロザリンデに懐中時計取り上げられてしまうわけです。
「チャールダーシュ」の後はハンガリー舞曲。あれっと思ったのが「葡萄酒の情熱の炎に」で、これオルロフスキー、アデーレ、アイゼンシュタインの順番で歌うのが普通だと思うのですが、今回はまずオルロフスキーが歌って、シャンパンボトルをアイゼンシュタインにトス、そのままアイゼンシュタインが自分のパートを歌い、そのボトルを引ったくって、最後にアデーレが歌ってました。
鐘の音に「帽子! 帽子!」と騒ぐアイゼンシュタインとフランク。あら、帽子が逆に渡ってたのね。なかなか芸が細かい。仲良く肩を組みながら出て行く二人。その横でロザリンデはファルケと踊ってました。

第3幕 「所長〜」と思いっきり日本語でフロッシュ登場。アルフレートが「女心の歌」を歌うのに「まったくイタリア人てのは〜」とぶつぶつ。お、じゃ次は何か日本の歌が出てくるかな、と思ったら、アルフレート、「蛍の光」を歌ってくれました(笑)。「所長のスコッチをすこっちいただいて」とベタすぎのギャグの後、八代亜紀の「舟歌」を歌いながらご退場。
入れ替わりに二日酔いのフランク所長。上着を取りに行ったクローゼットに頭激突。ほうきにかぶせた上着と踊っちゃってます。口笛が途中からかすれるのがまた可笑しい。懐中時計は何度も落っことすし(そりゃ落ちるって)、ヤカンに入れるものは間違えるし、煙草に火つけるのに使ったアルコールランプの火がなかなか吹き消せなくて、最後には水かけてました。煙草くわえたまま新聞読んで、煙草が新聞にずぶずぶと。そこへ「火事だ〜!」とフロッシュ登場、思いっきり水ぶっかけて消してましたが、それでも起きない所長。「起きてるとき以外の顔はみんな好きなんだけどね〜」とフロッシュ。
仔猫ちゃんが2匹、ならぬアデーレとイーダ登場。あら、シャグラン卿はここにいるってファルケが教えたんですね。この辺からフロッシュのセリフは日本語だったりドイツ語だったり。日本語のセリフにドイツ語が答えるのもなんだか妙なものですが、まあ仕方がないでしょう。
「ルナール侯爵がお見えです」でパニックになるフランク。JaだNeinだと指示が二転三転した挙げ句、何とかアデーレとイーダを13号室に押し込んだところへ、陽気に歌いながらアイゼンシュタイン登場。お互いに身分を明かし合う二人ですが(二人ともお水を吹くのお上手でしたね;笑)、アイゼンシュタインならこの手で逮捕したよ、と取り合わないフランク。最初は笑ってたアイゼンシュタインですが、事情を聞いているうちに、何だって! と表情が一変。
ベールをかぶったご婦人がお見えですよ〜、とフロッシュがフランクを呼びに来ます。一人残されたアイゼンシュタイン相手に、いやあお客がひっきりなしでせわしいね、でも何だか楽しくなりそうだ、な、な、そうだろ、と日本語で喋りまくって出て行くフロッシュ。直後のアイゼンシュタインのセリフの字幕に「日本語じゃ分からん」て出て、会場どっと大ウケでした。あれ、日本語って聞こえなかったけど、と名古屋では聞き耳を立ててましたら、なんだ、“Ich verstehe kein Wort.”(びわ湖では“Ich verstehe gar nicht.”だった)って言ってるだけじゃない。字幕が上手いんですね。
今度はフロッシュ、ブリント弁護士を連れてきます。アイゼンシュタインを呼んでくる、というので、「なな、何言ってんだ、あいつは。ア、アイゼンシュタインなら、こ、ここにいるじゃないか」とブリント。どうやらあ、あっちにもいるらしいぜ、いいこと思いついた、お前のそのコートと鞄と眼鏡と・・・カツラを貸せ。カツラなんか・・・と言い返すブリントですが、これは何だ、とアイゼンシュタインが髪の毛引っ張ると・・・坊主頭(笑)。“Was a, Was a, Was a,”と盛大にどもるブリントですが、“Wasser”(水)なら廊下だよ、とあっさり連れ出されてしまいます。
腰縄つけられたアルフレートをフロッシュが連れてきます。誰もいないじゃないか! あれ、さっきまでいたんだけど。見捨てられたんだ〜、とアルフレート。そこへやってきたロザリンデが、これがばれたら大変よ、と話しているところへ・・・偽弁護士登場。事情をお聞きしましょう、とフランクの椅子に座ります(どうみたって身長違いすぎるんですが、ちゃんと小さくなって歩くスコウフスに爆笑しました。どもりもちゃんと真似てて上手いですね〜)。
事情を聞く偽弁護士ですが、「自業自得だ!」と声を荒げてしまっては、「依頼人はこっちだぞ!」と言われて、すみません、と鞄のかげに隠れたり。挙動不審の弁護士に、何よあなた、夫に同情してるみたいだけど、とんでもない男なのよ、目玉くりぬいて離婚してやるわ、とロザリンデ。アイゼンシュタインは柵につかまって小さくなり、いいぞー、と後ろでアルフレートは手を叩き。ダンナをとっちめる方法はないか? と言うアルフレートについにキレた偽弁護士、机の上に飛び乗って「私がアイゼンシュタインだ!」。その前のセリフ“Hier stehe ich als Rächer”でsteheを延々伸ばすのも可笑しかったんですが、わー、またゴリラみたいに胸叩いてる〜。拳構えてアルフレートを追っかけ回す大立ち回りがまた面白すぎ!
「ガウンと妻を返してもらおう、決闘だ!」と息巻くアイゼンシュタインに、「これは何かしらね」と巻き上げた時計を突きつけるロザリンデ。そこへぞろぞろやってくるパーティーのメンバー。中央のベンチの上に乗って、合唱の“o Fledermaus, o Fledermaus”に合わせてファルケがこうもりマントをバタバタさせてます(笑)。最後はロザリンデがアイゼンシュタインにビンタ一発(音だけでしたけど;笑)。みんなでシャンパンで乾杯してメデタシメデタシ、でした。

話の流れを分かりやすく見せてくれる演出で、楽しかったです。セットも自分が今まで実演で見た中では一番ゴージャス(ちょっとスポットライトのあて方が歌番組っぽかったですが)。バイエルンの映像で予習してった身には、何だかデジャビュを感じる場面がちらほらありましたが、まあこれが王道ってもんなんでしょうね。舞台の上の人たちがみんな楽しそうに見えるから、この演目、好き♪

日本での公演ということで、キャストにも随分日本語のセリフ言わせてました。オルロフスキーがロシア語で「乾杯!」と言う場面、アイゼンシュタインが“Prost!”じゃなくて「カンパイ」って言ってたし、ロザリンデが仮面を取るように言われる場面では、オルロフスキーの最後のセリフが「ソレゾレゴジユウニ」。ロザリンデはチャールダーシュの前に、「マエストロ・オザワ、Musikオネガイシマス」って言ってたし、フランク所長は「アジガシナイ」と「13ゴウニオツレシロ」でしたか。アデーレとイーダがお腹ぺこぺこ、って言う場面じゃ、「それより日本式にとりあえず、ビール!」なんてイワン(かな? これは日本人)のセリフも入りました。

キャストで特筆すべきは、何たってアイゼンシュタインを演じたスコウフスでしょう。こういう役似合うだろうなあ、と予想はしていたのですが、こんなにオモロイとは思いませんでしたよ。現在最高のアイゼンシュタインというふれこみだっただけあります。もう挙動がいちいち面白すぎ! ゴリラみたいに胸を叩くところ、毎回楽しみに見ていたくらい(笑)。おバカ男をなんとも生き生きと演じて楽しそうでした。
出待ちの時に見たら、あら、坊主頭(5年でなくなっちゃったんだそうで)。おかげでその後3公演、「私がアイゼンシュタインだ!」ってブリントの扮装をかなぐりすてる場面、自分のカツラはとらないでね、と変なところでハラハラしてました(苦笑)。そう思って見ると、カツラをとった直後、微妙に頭を気にしてるような・・・。
考えてみればこの人まともに聴いたのは初めてなので、サンプルが偏ってたんでしょうけど、最初、こんな軽い声だっけ!? とびっくりしました。私、ギルフリーより重い声だと思ってたんですけど、比べて聴くと、明らかにスコウフスのが声明るい。まあ、ファルケはバリトンの役だけど、アイゼンシュタインはテノールも歌うんで、そのへんの音域の違いかもしれませんけど。

お目当てのギルフリー、ファルケ役だと聞いたときには、なあに、歌うとこ少ないじゃないの、なんて思ったものですが。でもこの2人で、一杯喰わす方と喰わされる方の組み合わせなら・・・やっぱりこれが正解のような気がします。仕掛け人て雰囲気は良く出ていながら、策士になりすぎない茶目っ気もあって、その辺の匙加減がぴったり。心配した歌の方も、かすれることもなく、録音で馴染んだあの声そのままで、生で聴いてる! と思ったらもう胸がいっぱい。「兄弟姉妹となりましょう」のソロでは不覚にも涙ぐみそうになったりして・・・(考えてみれば男声陣の歌で、歌に集中して聴けるのって、この1カ所くらいですね)。「メリー・ウィドウ」でキャバレーのシーン楽しそうに見てるところ、私結構好きなのですけど、バレーシーンで、あ、同じ表情してる〜、というのが見えて、嬉しかったです。ポルカでもノリノリで飛び跳ねてました。カーテンコールの時もこうもりマントをバタバタさせてましたね〜。

フランク役のジョン・デル・カルロも役にぴったりでいい味出してました。3幕の一人芝居も楽しかったです。スコウフスもギルフリーも長身の方だと思うけど、このおじさんさらに少々高かったですね。腹回りは余裕で勝ってたし(笑)。

アルフレートのゴードン・ギーツは若くてハンサム、バリトン3人がでかすぎて目立たなかったですけど、取り押さえ役の2人よりははるかにでかかったので、結構長身でしょう。お歌はまだまだ発展途上という感じ。最後の3重唱では大分調子を上げてきましたが、この役、初っ端から歌うとこが多いですしね・・・。ちょっと声量足りなめで、vincero! もいっぱいいっぱいというレベルでしたが、その決めきれないところが、逆に役には合ってると言えなくもないか・・・なんて(苦笑)。演技は良くて、ロザリンデと並んで絵になりましたし、嫌いな声ではないので、今後の成長に期待、かな。

ロザリンデのロスト、アデーレのバックで歌う場面、あれ、ロザリンデのが目立ってるじゃん、と思ったあたりに貫禄を感じましたが・・・。部分的には、おおっ! と思うんですが、なんか全体にうねって聴こえまして。ハンガリー人がドイツ語でチャールダーシュを歌うのって、どんな感じなのかしらん、と変なこと楽しみにしてたのですが、それどころじゃない感じで、何かはらはらしながら聴く羽目に。ラストに到っては出だしをフライングしちゃいましたし。
というわけで、歌唱の方はなんか微妙・・・という印象でしたが、演技の方はさすが。小柄で可愛らしいのですけど、奥様らしさもちゃんとあって。男どもよりなんだか一枚上手という感じのロザリンデでとっても魅力的でした。スコウフスとのダンスは、さすがに身長差ありすぎで、なんか踊りにくそうでしたけど、でも上手かったです。
夜会の場面、アイゼンシュタインに向かっての第一声に、※◇*◎#★! って感じの字幕が出て会場大爆笑だったんですけど、あれホントにハンガリー語だったんでしょうね。ハンガリー訛りのドイツ語なんてのもお手の物だったんでしょう、さすがにどう訛ってるかなんてとこまでは分かりませんでしたけど。

アデーレのアンナ・クリスティ。まあ予習に聴いてたCDの人が上手すぎたせいでしょう、ちょっと物足りない気もしましたが、伸びやかな明るい声で、ソロ3曲とも十分に聴かせてくれました。これで高音とコロラチューラがもっと安定したら言うことなし。写真よりはちょっとぽっちゃりしてる印象でしたが、可愛らしいチャーミングなアデーレでした。芝居っ気が足りないと面白くない役ですが、演技もはまってて大満足。「私が田舎娘を演じたら」楽しかったです〜。

個人的に、女声で一番安心して聴けたのはオルロフスキーのゴールドナーでした。男役やるにはちょっと身長が足りないのが惜しいかな、と思いましたが、ちゃんと男に見えたのも個人的には大満足。ただ、付け髭なんかしてるせいか、18歳だというにはもう少し歳いって見えましたが。エキセントリックな感じはなくて、お茶目な主催者という印象のオルロフスキーでした。女の子も大勢はべらせてたし(笑)。

演奏は・・・指揮のことはよく分からないのですが、個人的にはもう少し軽やかな演奏の方が好みですねえ。1幕の男二人の二重唱、楽しみにしていた分だけ、余計に「重っ!」と思ってしまいました。その前の3重唱でブリントが動詞連発でまくし立てるところも好きなんですけど、なんだかいやに穏やかなテンポで、聴いててつんのめりそうになってしまいましたわ。

遠路はるばる来たんだから、ってことで出待ちにも初挑戦。それこそ楽屋口ってどこよ? って状態からのスタートだったのですが、ホールしか立ってないので分かりやすかったです(複合施設の名古屋と浜松は分かりにくかった・・・)。首尾良くプログラムにスコウフスとギルフリーのサインもらって帰ってきました。

2日おいて今度は猛暑の中を愛知県芸術劇場へ(直前になんとかチケットを手に入れることに成功したんです)。
東海テレビの開局50周年記念とか銘打ってあって、TV中継するわけでもないのにねえ、なんて思ってたら。
第2幕、「特別なゲストです」って声がかかったかと思ったら、なんとオーケストラが「燃えよドラゴンズ」を演奏し始めるじゃないですか。
だ、誰呼んだのよ? って思ったら、でっかい仮面つけたドアラ登場。
(幕間にお手洗いに並んでたら、「あのドアラ本物かなあ」「本物だったらバック転したんじゃない」なんて会話が・・・(笑)。燕尾服でバック転するのは無理でしょうよ。)
さらにオケが演奏するのは・・・またも「誰も寝てはならぬ」。仮面を片手に入ってくる男女。この状況でこの曲ってことは・・・。やっぱり女性の方はトリノ五輪の金メダリスト・荒川静香さん。
男性の方は歌舞伎役者の中村七之助。「中村屋!」なんて声がかかりました。(歌舞伎版「アイーダ」のタイトルロールやるんですね、この人。)
「ぶどう酒の情熱の炎に」まで聴かれてゲストはご退場。アナウンサーのお姉さんがよくとちってたのがご愛敬でしたが、やるじゃん東海テレビ! って感じでした(笑)。
オケピットまで見に行けば、「名古屋用」て楽譜があったようで、なんとなく察しがついたらしいのですが、私にとってはホントにサプライズ。荒川さんと並んで立って、何か喋ってる・・・? のをなんだか不思議な気分で見てたものです。いやはや、小澤征爾指揮の「燃えよドラゴンズ」を聴く日があるなんて(笑;ちなみにマエストロは「阪神とレッドソックスのファン」だそうですよ)。こういうことができるのも「こうもり」ならではですね〜。

翌日の朝刊を読んでたら、あら、写真付きで記事が載ってました。えー、写ってるよ〜、と思わずニヤニヤしてしまった私です。ネットでも同じ記事が読めました。コッソリ転載した写真はすでにネット上からは削除されてしまった中日スポーツの記事より。
ちなみに、本人ひょっとして掲載紙をもらってないかも、と思って、このプリントアウトを浜松公演の後にプレゼントしたら、知らなかったと見えて、えらくウケてくれました。(後ろからのぞいてったロストがまた大ウケで、もう一枚印刷してくればよかったと思ったくらい。)中日新聞さんこの写真使ってくれてありがとう、でした(笑)。

フロッシュ役は神奈川とは別キャスト。元タカラヅカの方だときいた時には、どんなフロッシュ??? と思ったものですが。マントをなびかせて登場するなり「王妃様!」・・・は? ・・・・・・「フェルゼンが参りました!」 (このへんでようやく状況が読み込めた私) 何と! 「ベルばら」ネタですか! 「王妃様いないんだけど」のセリフに場内爆笑。「あら、あなた小澤征爾さん」「今日は7月24日、合ってますよね」「これ、ベルばらの舞台ですよね。え、違うの?」って、今度は指揮者とやりとりしてる〜。
というわけでこのたびアルフレートが歌うのは「愛〜、それは〜」(笑)。彼女も「アンタが乗せたのよ」って言いながら朗々と歌ってくださいました。先ほど「ヒトが一生懸命芝居してるのに。そういうのを日本じゃKYって言うのよ。シャーラップ!」なんて言われたアルフレートが、今度は「ウルサイ」言い返すオチつき(笑)。
「『こうもり』の舞台だったのね。ヤカンがあるからおかしいなと思ってたんですよ。大丈夫、台本持ってますから、今から覚えてきます。え、なにこれドイツ語!?」で、再び歌いながら退場、そこへフランク所長登場、というようにつながったのですが、いやあ笑いっぱなしでした。やっぱり舞台で第一線張ってた人は違うなあと感心。しかし台本書いた人もよく考えましたよね〜。

神奈川ではアルフレートが「女心の歌」を歌うと、フロッシュが「なに? シューマイ弁当だ? ここは横浜じゃないんだぜ」ってギャグがありまして。名古屋ではこのギャグ自体はそのままでしたが、「ここは名古屋なんだから「みそカツ弁当」」ってつなげてました(じゃあ浜松はウナギ弁当かよ、と思ったらホントにその通りでした;笑)。あと、「イーダさんがオルガ」ってのも名古屋仕様のギャグかな? と思ったんですが浜松でも言ってましたね。東京でもあったのかしら。「オルガの方がイーダ」ってのはどうやら全公演共通のようでしたが。

歌手さんの印象は初日と同じ。気持ち神奈川のが硬かったかな、という印象ですが、こちらが舞台に近くなったせいかもしれません(今度は2階の右サイド)。今度はロスト、出だしはとちりませんでしたが。
ちなみに本日のFocus。ポルカの場面でダンサーの女の人に足ぶつけちゃって、ゴメンナサイしてました。あと、フランク所長の後ろに立って何かやってる? と思ったら、所長、太鼓腹のせいかベストのベルトがほどけちゃったんですね。結び直してあげてたんでした。

先月の「チェネレントラ」では営業してなくてブーイングだったというビュッフェも、今日はちゃんと営業中。神奈川でもロビーでワインなんか売ってるのを見ましたけど。そりゃあ、お酒の飲みたくなる演目ですものね〜(笑)。

さて、この日も出待ち、今度はコレクション持ち込んでブックレットにサインしてもらったのですが(神奈川より人が少なかったのをいいことに、写真まで一緒にとってもらってしまった)。列に並んでたら、私の前にサインもらった人が“Danke schön”って言ってくんですね。「こうもり」はドイツ語だし、この人ドイツ語ペラペラなのは知ってるけど(って本人がインタビューで言ってた)、アメリカ人なんだから、普通に“Thank you”でいいんじゃないの? って思ってたんですが。自分の番が済んで荷物片付けてたら、次のグループの方がなんか騒いでて。ん? と思ったら“I'm not Bo Skovhus.”って。・・・あ、間違えられたのね(笑;そりゃ、プログラムのページが違えば分かるわなあ)。
いえね、実は神奈川でも後ろに並んだ人に、「あの人誰?」って訊かれて、 ! って思ったんですよ。まあ、教えてあげた代わりにサインペン借りちゃったんですけど。(サイン会だと相手が持ってるので、持参するという頭がなかった(汗)。スコウフスの時は、人が殺到という感じでとても頼めるような状況ではなく、結局ボールペンでサインもらったのでした。)以前2ちゃんだったか、「来日しないので誰も知らない」と書かれてて、そこまで言わなくても、と思ったものですが、妙に納得してしまいましたわ。
次の浜松では、並んだ人に向かって、初っ端に“I'm Rod Gilfry. He is Bo Skovhus.”って言ってました・・・(笑)。

2日おいて、相変わらずの猛暑の中を今度はアクトシティ浜松へ。この日はなんと、ブログで知り合ったSardanapalusさんとご一緒できました(Sardanapalusさんのご感想はこちら)。開演前・幕間と楽しくおしゃべりができた上に、プレゼントまでいただいてしまって。ありがとうございました〜(プレゼントの感想はこちらで)。

本日の席も2階の右サイド。しかし、名古屋ではホールの構成上、1階席の延長のような席になってたのですが、今度は本当に真横で、2階の高さ。ちょっと斜めになって見なければならないのですが、舞台に近いこと! びっくりするくらいよく見えました。私がチケットを買うぴあは、購入前に座席を確認できるので、S席が平土間の奥まった席、A席がサイドの1列目、なら近い方がいい! と購入した席だったのですが、大正解。どうしてこの値段設定なのかしら。
上からだと指揮姿もよく見えて、初めて序曲の最中見てるものがありましたし、なかなか始まらないな〜、と思ったら、あら、人が抜けてたのね、ってとこまで見えてしまいました。

というわけで、視覚的に一番大満足だったのがこの回。あら、アイゼンシュタイン、ロザリンデに肩もみなんかさせてる! とか、ファルケ登場のシーン、家の中に入ってくる前からドアの外でアデーレがはしゃいでるじゃん(そりゃ「仕事しなさい」言われるわ)、なんて、初めて気がついたところもいろいろ。「一緒に夜会に行こう」の二重唱で、ファルケの手がアイゼンシュタインの頬をすーっとなぞるのとか、帰りしなにお帽子くるっと回すのなんかも見えたりして。夜会にやってきたアイゼンシュタイン、彼がオルロフスキーだよ、とファルケに言われてすっ飛び退くんですが、何やってんだろと思ってたら、靴のかかとをカチってやってたんですね(シャグラン卿と侯爵に乾杯ってファルケがやる場面も、それぞれカチカチいわせてるのがよく聞こえました)。3幕最初のフロッシュと指揮者のやりとりも、あ、小澤さん、喋ってたんだ! って初めて聞こえましたし。フランク所長がやかんに茶っ葉の代わりに懐中時計入れちゃうシーンも、初めてちゃんと見えました(それまでは想像で補足していたんで)。

オペラグラスを使えば、表情までばっちりよく見えて。ロザリンデにお帽子かぶせられたときのアルフレートのなんともいえない表情とか、アデーレに出くわした時のアイゼンシュタインの疑り深そーな表情とか、「ガウンを着て奥さんとくつろいでたよ」とフランクに言われて、それまでゲラゲラ笑ってたのが、何だって!? となった瞬間のアイゼンシュタインの表情とか(間の取り方が絶妙に上手いんですよ〜)、とっても楽しめました。
刑務所のセットがせり出してくるのは名古屋でも見えたのですが、他のセットもせり出してくるんですね。

本日のFocus。最後の大円団の場面、給仕役の人がシャンパンのグラスを配って回るのですが、スルーされちゃって、慌てて自分で取りに行ってました。あと、カーテンコールの時、この日はこうもりマントをバタバタさせませんでしたね(びわ湖もやらなかったけど)。

浜松公演も静岡朝日テレビの開局30周年記念だったのですが、サプライズはありませんでした(笑)。ちなみに、中日新聞東海本社の後援もあったようで、静岡県版にこの公演の記事が載っていた模様。ネット上からはすでに削除されてますが、大分遠目ながら舞台写真が載ってたので、これまたコッソリ転載します。

本日の出待ちでは、女声陣3人にサインをもらうことができました(テノール2人は出てきませんね)。でかいおじさんが3人揃ったバリトン陣に比べると、今回の女声陣は、私と背の変わらない人ばっかりで(当方身長160cm)、プログラムの写真で判別するのって結構難しいし、気がつかずにスルーしてた可能性もあるなあと思いましたが。ロストなんて私より明らかに小柄で、それでいて舞台ではあの存在感、すっごいなあと思いましたよ〜。

アデーレ役のクリスティ、お父さんはアメリカ人だけど、お母さんは日本人なんだそうで、めちゃくちゃ日本語がお上手でした! 少し日本語でおしゃべりさせていただいたら、とっても親しみがわいてしまいましたよ。是非是非応援したいと思います。(そういえば何でアデーレには日本語のセリフがないんでしょうね? あの日本語を舞台で喋ったら、絶対インパクトあっただろうに。)
「ライトが暑いのよ〜」なんて言ってらっしゃいましたが、確かに夏にこの衣装、暑いだろうな・・・。ギルフリーもハンカチ出して汗ふいてるところを見ましたし(神奈川でも見ました。ポルカの時にそのハンカチ振り回してました)。スコウフスなんか、チャールダーシュの時に何気なく見たら、さらにえらい勢いで汗ふいてましたし(びわ湖でもそうでした)。

待ってる人間が一番人が少なかったせいか、出演者ご家族様の交流風景も見られまして。ギルフリーの奥さんは分かりましたし(お子様の顔は判別できませんでしたが)、ゴールドナーの旦那さんが「オルロフスキーの夫です」って自己紹介してたのが笑えました。
コンサートの後のサイン会より、なんだかカジュアルな雰囲気で楽しいですね。

本来これで終わりのつもり、だったのですけれど・・・。直前にチケット入手に成功して、最終日のびわ湖ホールも行っちゃったんです(ここまでくると執念ですな、私)。まあ手に入ったのがめっけもんというチケットですから、今までで一番見づらい席で(3階席)、直前が一番至近距離で見た浜松ですから相当差がありましたが、それでも堪能できました〜。

3回も見てるというのに、あら、これ見落としてたわってのがいろいろあったのも面白かったです。 「8日間もあなたなしで過ごすなんて」の最中、あ、アデーレがロザリンデの衣装、後ろに隠して運んでる!(それをアイゼンシュタインが見てる!)。フランクがアルフレートを連行していくのと入れ違いに、郵便屋さんが手紙と箱を届けにくるのは見てたんですけど、あの箱の中に仮面入ってたのね! (幕が下りる前に、ロザリンデが試着してるところが見えました。)時計はどこに、とフランクに訊かれて、アイゼンシュタインが「ブダとペストの間だよ」と答えるセリフ、浜松で初めて聞き取れたのですけど、ふと字幕を見たら「彼女の高野山と比叡山の間だよ」って出てまして。そんな面白い字幕が出てたとは知らなかったです。

フロッシュは神奈川の時と同キャスト。アルフレートが歌うのは同じく「蛍の光」なんですが、「お客様帰らないでね。営業妨害だ〜」のセリフは記憶になかった・・・。今回の弁当ネタは、「ここはびわ湖、大津だよ。大津の名物ってったら鱒寿司だろ」でした。フランクが迎え酒をやるシーンで、隠し場所の前に張ってあるポスター(指名手配ですか?)に向かって「オヤ、オザワサン」てやるのは、今回が初めてだったような気がします。ブリント弁護士、今回コートだけでなく上着まで脱がされかけてましたね。

残念ながら今回、出待ちはできませんでした。楽屋口までは行ったんですが、待たされた挙げ句、「出演者は成田へ直行なので出てきません」ですって。どこから出てくるかなあ、とみんなが口々に言ってたのはここだけなので、なかなか侮れないところのようです、びわ湖ホール(笑)。マエストロのサインはここでいただけましたけど。まあ、浜松の時点で思い残すことはありませんでしたけどね。

ともかくも、この暑〜い日本をあちらこちらの2週間。誰も脱落することなく元気に最後まで歌ってくれて、キャストの皆様ありがとう! そしてお疲れ様!
(また日本に来てね! 今度はもっと歌が聴きたい!)

オペラを見るようになって、東京に住んでたらな〜、と思ったことは何度かあったのですけど、今回ばかりは名古屋近郊に住んでて良かった! と心底思いました。4回も見に行くことができたのも、地の利以外の何物でもないですし、サプライズも堪能したし、新聞記事はネタになってくれるし・・・(笑)。
同じ公演3回も見たら飽きるかな、なんてチケット買う前は思っていたのですけど、オチが分かってても楽しいのが「こうもり」ですね。しかし堪能しました。今後生で「こうもり」観る機会は一生無いぞ、てことになっても、まあいいやって思っちゃいそうな気分です(笑)。これだけの豪華キャスト、そうそうないだろうし。何たって、お目当ての歌手を、大好きな演目で、しかも生で見られるなんて、こんな幸せってないですよ〜♪
追記(2009年11月15日):大浦みずきさんの訃報をニュースで知りました。お元気な姿を舞台で拝見してから一年とちょっとしか経っていないのに・・・。ご冥福をお祈りします。

しかし、スコウフスのアイゼンシュタインの映像が無いなんて、オペラ映像界の一大損失だと思います(断言)。ウィーンの「ルクセンブルク伯爵」、ドレスデンの「メリー・ウィドウ」と、最近立て続けにオペレッタ映像出てるので、いずれ出ると信じてますけどね。バイエルン公演のヴェヒターさんほど老けないうちに、是非。(だって“こうもり事件”って独身時代の話でしょ? 新婚じゃなさそうだけど、アルフレートはロザリンデをまだ諦めてないわけだから、結婚3年目くらいで、事件は4、5年前とすると、アイゼンシュタインはせいぜい30代、遅めに見積もっても40代前半では? というのが私の解釈なのですが。)・・・願わくばザルツの「こうもり」と「フィガロの結婚」を足して2で割ったような演出じゃありませんように。
ギルフリーもアイゼンシュタインやったことはあるので、チューリヒあたりで・・・駄目?

これだけの「こうもり」を4回も見ちゃったからには、よっぽどの公演じゃなきゃ満足できないわけで、ま、当分見に行くことはないだろうなと思っていたのですが、あにはからんや、2年足らずで別の舞台を見に行くことになりました。
シェーンブルン宮廷劇場の引越公演(本来は「ウィーン・カンマー・オーパー」というカンパニーだそう)。お目当てのキャストもいないし、一人だったらまず行かなかったと思います。しかし初心者でも楽しめそうでかつ自分も好きな演目、お目当てがいないだけに安い切符が買える、というところがオペラ初心者の友達と行くにはちょうど良かったのですね。

ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン:ペーター・エーデルマン
ロザリンデ:エリザベート・フレッヒル
アルフレート:ヴァレリー・セルキン
オルロフスキー侯爵:ヨッヘン・コヴァルスキー
アデーレ:ハイディ・ヴォルフ
ファルケ博士:アルフレード・ベルク
フランク:ホルゲ・ナザララ=ファビエ
ブリント博士:ダヴィット・アメルン
フロッシュ:フランツ・スーラーダ
イーダ:ウルスラ・サメイト
指揮:ロベルト・ツェルカー  演出:フォルカー・フォーゲル

演出がフォルカー・フォーゲル。チューリヒの「フィガロの結婚」のバジリオや「ヘンゼルとグレーテル」の魔女で見たことがあるテノールと同じ名前だな〜と思ってたら、同一人物なんですね。ちょっとびっくり。

ノイエンフェルスのトンデモ演出みたいなのを日本に持ってくることはないだろう、とは思ってまして、予想通り安心して見てはいられましたが、全体に現代的でスタイリッシュな舞台にはなっていました。
第1幕で割と印象に残ってるのは、ブリントが若くて頼りない感じであったこと。メガネかけて生真面目そうではありましたが。なぜかアデーレに食事をお給仕されてるし。んで、アイゼンシュタインに出てけと言われたブリント、家の中で迷子(?)になった挙げ句にテーブルの下にもぐりこみ。しばらくしてアイゼンシュタインが料理の蓋をとると、そこにはブリントの頭が・・・(笑)。あと、アルフレートが刑務所にしょっ引かれるシーンでは、なぜか檻に入れられてました。
お、と思ったのは第2幕。音楽が始まる前に、ファルケが「アイゼンシュタインに復讐するお芝居だから、みんな協力してくれ」とかいうようなことを言うんです。“お芝居”であることを強調した演出で、オルロフスキーの従者イワンも、変装したブリントなんですよね。
そういう演出だからか、第3幕の変装場面でブリントのカツラを取り上げるシーンはなし。ちなみに最後、第1幕にも出てきた檻が再び出てくるんですが、この中にロザリンデも一緒に入っちゃって、「これで彼は8日間私のもの」(!)というセリフでオチ、でした。

日本公演ですし、やっぱり台詞に日本語混ぜて笑いをとってました。かみ合わないフランス語会話では「マッサージ」「シアツ〜」とかやってましたし。
特にセリフだけのフロッシュは勝手が違って大変だったでしょうが、スーラーダ、片言の日本語で笑いをとりつつも、演技自体もさすが本場という感じの存在感でした。覚えてるのは「焼酎おいしい」(スリボヴィツェはDVDの字幕まんまでした)「ここは名古屋刑務所」「くさやみたいにくさい」「ホンダ、ミツビシ、トヨタ」「1・2・2.5」といったところ。
ちなみにフロッシュがブリントを案内してくる場面で、「ヒダリ〜、ミギ〜」ってやってまして、あれは「ブリント」に“目の不自由な”という意味があることを知ってないと分かんないんじゃなかろうか、と思ったのですが、案の定、同行者に訊いてみたら意味不明だったそうです(字幕に説明もなかったし)。

キャストで一人挙げるなら、ロザリンデ役のフレッヒルですね。可愛らしさではロストに負けまして、大分貫禄の奥様でしたが、ずっと安心して聴いていられました。アイゼンシュタイン役のエーデルマンは、メルビッシュでアイゼンシュタインを歌ったDVDも出ているということで、ちょっと期待していたんですが、いやあふけましたねえ(10年以上前の映像)。声量も物足りない感じでした。

今回の公演の目玉は、オルロフスキー役のコワルスキー。1994年の来日公演は有名なんだそうで、YouTubeに挙がっていたのを試聴したのですが、やっぱり私、メゾのが好きだなあ、というのが正直な感想ではありました。
で、実際に聴いてみたところ、「お客を招くのが大好き」でえらくあぶなっかしい歌だなあと思ったら、「シャンパンの歌」では全く声が出てない! ところが、その後の出番ではちゃんと声が出てて、さっきより良いくらい。何が起きたんだ? と思ってました。第3幕で、必ず女の人と腕組んで登場するなあ、とふと気がついたら、カーテンコールで彼女もメインキャストと並んで挨拶。あ、この人が代わりに歌ってたのね、と気がついた次第です。終了後にロビーに出たら説明とお詫びの掲示がしてありました。代役が舞台袖で歌い、舞台の上では口パクで演技って話は聞いたことがありましたが、“男”のオルロフスキーだとこの手があるか、と変なとこに感心。

そういえば「シャンパンの歌」ですが、DVDでは「シャンパンは一番」となっている字幕、一緒に鑑賞した家族から“der Erste”なんだから「シャンパン1世」だ、という指摘が。なるほど、だから万歳! なのね、と思ったものですが、今回の公演の字幕ではちゃんと「シャンパン1世」でしたね。

全般に、ま、こんなもんかなという感じではありましたが、同行者は楽しんでたようで、誘った手前ほっとしたし、幕間に仲良くスパークリングワインなんか飲んじゃったりしたのも楽しかったです。

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