ジョセフィン・テイ Josephine Tey | |||||||||||
英国南部の海岸に、女の溺死体が打ち上げられた。まもなく身元は映画女優のクリスティーン・クレイと判明。彼女の髪にコートからむしりとられたボタンがからまっていたことから他殺が疑われ、容疑は彼女の別荘に滞在していた青年ティズダルにかかるが、警察の動きを知った彼は姿をくらましてしまう・・・
フランチャイズ家という屋敷に住むシャープ母娘に誘拐の疑いがかけられた。ベティ・ケーンという娘が、1カ月の間監禁されて家事労働を強いられ、拒否すると暴行を加えられた、と申し立てたのだ。弁護士ロバート・ブレーヤーは娘のマリオン・シャープの頼みで事件を調査することになったが・・・
神経症のために休暇をとったグラント警部。静養のためにスコットランドの田舎へ向かったところ、終着駅で、B7の個室から一人の男が死体で発見された。死体が持っていたと思われる新聞の余白に奇妙な詩が書きつけられているのを見つけたグラント警部だったが、他に不審な点は見られず、そのまま事故死として処理された。しかし、その奇妙な詩と死体の顔はグラント警部に強い印象を残し・・・
女優のマータ・ハラードを誘ってディナーに行こうと、作家ラヴィナ・フィッチの出版記念パーティーにやってきたグラント警部。そこで作家の甥・ウォルターを捜しているという美貌の青年リスリイ・シャールに声をかけられた。ラヴィナに誘われてサルコットの村に滞在することになったリスリイ。しかし、彼の出現により、ウォルターとその婚約者リッツ、リッツの母エマ、との間に微妙な空気が漂うように。共同で本を出版することになったウォルターとリスリイはカヌーによる撮影旅行に出発したのだが・・・ | |||||||||||
シリーズ作品リスト ハヤカワ・ポケットミステリ | |||||||||||
『列のなかの男』 The Man in the Queue 訳:中島 なすか 〈論創海外ミステリ〉 1929 |
『ロウソクのために一シリングを』 A Shilling for Candles 訳:直良和美 1936 |
『フランチャイズ事件』 The Franchise Affair 訳:大山功 1948 |
『美の秘密』 To Love and Be Wise 訳:河田清史 1950 | ||||||||
『時の娘』 The Daughter Of Time 訳:小泉喜美子 1951 |
『歌う砂』 The Singing Sands 訳:鹽野佐和子 〈論創海外ミステリ〉 1952 |
孤児院に育ち、メキシコやアメリカを放浪してイギリスに帰ってきたブラット・ファラー。彼がかつての隣人・アシュビィ家の息子にそっくりなことに目をとめた飲んだくれの役者ロディングは、彼を、行方不明になっているアシュビィ家の長男・パトリックに仕立てることを計画する。ロディングに説得され、アシュビィ家に乗り込むことにしたブラットだったが・・・
遺産を相続して教職を辞め、偶然にも出版することになった心理学の本で、一躍ベストセラー作家になったルーシー・ピム。旧友ヘンリエッタに招かれ、彼女が学長を務める2年制の全寮制体育女子大学で、特別講師として講義をすることになった。講義を終えてすぐに辞去するはずが、学生たちにひきとめられて滞在を延ばしていく。しかし、試験監督を引き受けた時にある事件が起き・・・。 |
北村 薫 Kitamura Kaoru | ||||||
落語の真打ちが探偵役のシリーズがあると聞いて、いい年したおじいちゃんの、典型的安楽椅子探偵を想像していたため、読み始めて大いに予想を裏切られました。春桜亭円紫師匠、第一作の時はまだ40前とお若い方だったんですね(笑)。 語り手である女子大生(『朝霧』では社会人になっていますが)「私」の日常生活の中から“謎”が取り上げられているため、血なまぐさい事件が起きないのが好き。(人の死ぬ『秋の花』はやっぱり読むのが辛かったですが。) 「私」と大学の友達、男の子っぽい高岡の正ちゃんとおっとりした江美ちゃん、という組み合わせもいいです。 “政経学部”があるんだから彼女たちが通ってる大学、W大ですね(笑)。どの作品だったか失念しましたが、大学の図書館は開架でなくて云々という「私」の科白があって、ちょっと笑ってしまいました。(卒論を書く際、一度文献調べに行ったことがあるんですが、確かに使い勝手の悪い図書館でした。K大だったらそうは書かれなかったでしょうに。<大脱線) | ||||||
シリーズ第4作。個人的に一番好きな作品です。 | ||||||
シリーズ作品リスト 創元推理文庫 | ||||||
『空飛ぶ馬』 Flying Horse 1989 |
『夜の蝉』 Night Cicada 1990 |
『秋の花』 Autumn Flower 1991 |
『六の宮の姫君』 A Gateway To Life 1992 |
『朝霧』 1998 |
天藤 真 Tendou Shin | ||||||||||||||||||
現在は創元推理文庫で全集が出ており、そう苦労せずに読める作家さんです。しかし、生前から寡作であった上、1983年にお亡くなりという事情から、ちょっと前までは作品を手に入れるのがとても大変だったとか(なにせ文庫のほとんどが角川だし)。しかし新井素子さんにこんなこと書かれると(『炎の背景』の解説)、出版された本なら探しようもあるけど・・・と古本屋めぐりが嫌いじゃない私なんかは思っちゃいましたけど(笑)。 『日曜探偵』(出版芸術社)の解説で赤川次郎さんとの作風の類似が指摘されておりまして、重苦しくならないユーモア感覚、というあたりは確かに頷けます。しかしながらこちらは寡作なだけあって、ストーリー、トリック、登場人物、どれもが細部まで緻密に練り上げられていてハズレ無し。あっと言わせるトリックながら、トリックだけが浮いていなくて、それに相応しい登場人物までが用意されており、文章も上手くて読みやすいのがお気に入りです。一昔前の日本の推理小説って、やたらと説明調の文章で読むのがしんどいものばかりのような気がするんですが、この作者のものだけは出色ですね。小道具はともかく、内容的にはほとんど古さを感じないです。赤川作品も、選べば結構読み応えのある作品もあるんだけれども、出来不出来の差が激しいような・・・。(それが原因で赤川作品に手が出なくなった私です)。 | ||||||||||||||||||
刑務所内で知り合った健次、正義、平太の3人は、出所後、誘拐計画を実行に移した。目標は全大阪府の二倍以上の山を持つ、和歌山切っての名望家、柳川家のとし子刀自。艱難辛苦(笑)の末、なんとか誘拐には成功したが、要求する身代金が5000万と聞いて、刀自は憤然。なんと「100億円」要求しろ、と断固主張するのだ・・・
成城署の真名部警部は、とある縁で重度の脳性マヒの少年、岩井信一と知り合いになった。
手みやげにオセロゲームを持っていったところ、たちまち連戦連敗の有様になってしまう。
ある時、事件発生のため約束をすっぽかしてしまったお詫びにと、その事件の経緯を話した
ところ・・・
富士川市長の息子・野方英吾が、東京のラブホテルで隣の部屋を盗聴中、吉川太平の殺害計画を耳にし、相手の正体を知ろうとして殺された。この吉川太平という人物、製紙業から身を起こし、現在はデパート・運輸交通・マスコミなど富士川市のあらゆる事業を一手に握って富士川市の大ボスと呼ばれている存在である。さっそく捜査本部が置かれ、太平の側でも秘書の永倉と、押し掛け探偵を志願してきた現場に居合わせた英吾のガールフレンド三村早苗が、太平に恨みを持つ者をリストアップした。強引な事業拡大でのし上がり、また現在の妻が4人目で複雑な家族関係を抱え、女性関係も派手だった太平に心当たりは多く、その人数は250余名に上った・・・
千葉県銚子の断崖絶壁から一台のスポーツカーが転落した。中から死体で発見されたのは年齢性別が全くばらばらの4人の男女。現場の状況から警察は殺人事件と判断、捜査を開始したが、彼ら4人には生前の接点が全くなく、それぞれ殺されるような動機も持ち合わせていなかった。捜査が行き詰まる中、事件でたった一人の肉親である母親を失った令子は、真相を突き止めるべく他の遺族らと「遺族会」を結成した・・・
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高村 薫 Takamura Kaoru | ||||||
定年退職後、警備会社に勤めていた田岡に、元同僚からの電話は、かつての仲間の危篤と、やはりかつての仲間で、妻を殺して服役中だった男の出所を知らせてきた・・・「愁訴の花」。二つの会社に警備員として勤めている省三は、職場と職場の間の300メートル四方を、観察しながら歩くのが常だった。その圏内では、このところ奇妙な連続空き巣事件が起きていた・・・「地を這う虫」。
そのほか、サラ金の取り立て屋が主人公の「巡り逢う人々」、
代議士のお抱え運転手が主人公の「父がきた道」、の元警官が主人公の全4編を収録した短編集。
昭和51年に南アルプス・北岳で起きたある事件から16年後。東京で連続殺人事件が起きる。警視庁捜査一課七係の合田刑事らは謎の凶器と犯人を追うが、捜査には妨害の手が伸びていた・・・ |