馬を狙え!


敗者ばかりの日  Deadly Odds
リチャード・ペイトン 編  ed. Richard Peyton
菊池 光・他 訳  ハヤカワ・ミステリ文庫
競馬ミステリをまとめたアンソロジー。表題作はディック・フランシスの作品です。
ラブラブモードのエラリィ・クイーンや助手(女)のいるサイモン・テンプラーに面食らったりもしましたが(笑)、個人的には、
舞台がインド、語り口のなんともおかしい「ブロークン・リンク・ハンディキャップ」
毒薬ミステリの趣もある「アスコットの悲劇」
競馬音痴とおぼしきミセズ・マターの入れる茶々が愉しい「ダービー出走馬の消失」
あたりが面白かったです。

ガーデン殺人事件  The Garden Murder Case
S・S・ヴァン・ダイン  S.S.Van Dine
井上 勇 訳  創元推理文庫
ガーデン邸で行われたリヴァーモント・レースへの賭け。 《イクァニミティー》(冷静)という馬に1万ドルをかけた青年が、レース後まもなく 屋上ガーデンで射殺体で見つかった。 賭に負けたことを苦にした自殺と思われたが、その場に居合わせたファイロ・ヴァンスは、これは 殺人事件であると主張する・・・

ファイロ・ヴァンス、自分の厩舎を持つほど競馬にのめり込んだことがあるんだそうです。 怪我のため屠殺処分にすることになったのをきっかけに足を洗ったということですが、 馬券の方はよく当ててますね〜。事件の解決に馬の知識が役に立った感じはないですけど。 ・・・しいて言えば“最初の賭けに勝つと抜け出せなくなる”あたりくらいでしょうか(笑)。

“白銀号事件”  Silver Blaze
コナン・ドイル  Conan Doyle
延原 謙 訳  新潮文庫 『シャーロック・ホームズの思い出』 より
ウェセックス・カップ第一の人気馬を預かっていた調教師が惨殺され、馬は失踪した。 付近をうろついていた青年が逮捕されたが、状況証拠ばかりで決め手がない。馬主と事件担当の 警部から依頼を受け、ホームズはワトソンとともにダートムアに赴いた・・・

何分初めて読んだのが小学生の時なので、 馬よりもカレーの方で印象に残っていた作品です(笑)。
解説によると、行方を突き止める推理の根拠になった馬の習性については、 異論もあるのだそうですが。

スティーブン・ドビンズ  Stephen Dobyns
 『死をよぶ血統馬』

競馬の町サラトガでしがない探偵事務所を開いているチャーリー・ブラッドショーの家に騎乗停止処分中の騎手、ジミー・マクラッチーが訪ねてきた。八百長レースの容疑で起訴され、免責特権と引き替えに検察側の証人となってすでに大勢の人間を刑務所送りにしている彼は、ニューヨークで行われる裁判に出廷するまでの一週間ほど、泊めてくれという。しぶしぶ承知したチャーリーだが、翌日の夕方、帰宅した彼を待っていたのはマクラッチーの首なし死体だった・・・

好きでもない人間が泊めてくれというのを断れなかったり、母親が危篤だからと言われれば 牛乳配達の仕事を代わりに引き受けてしまったり、人がいいというか何というか、という感じの主人公チャーリー・ブラッドショー。20ポンド痩せたいという理由でプールに通っているというのもさえない中年まんまだし・・・。うーん、別に神のごとき名探偵がいいと言うつもりはありませんが、個人的な好みとしては、もう少し颯爽さが欲しいです(笑)。西部のアウトローのエピソードは面白く読めましたけど。

シリーズ作品リスト
『サラトガ刑事の大手柄』
Saratoga Longshot
訳:加藤洋子
集英社文庫
1976
 
Saratoga Swimmer
 
 
1981
『死をよぶ血統馬』
Saratoga Headhunter
訳:三谷茉沙夫
扶桑社ミステリー
1985
 
Saratoga Snaper
 
1986
 
Saratoga Bestiary
 
1988
 
Saratoga Hexameter
 
1990
 
Saratoga Haunting
 
 
1993
『サラトガ刑事の難事件』
Saratoga Backtalk
訳:加藤洋子
集英社文庫
1994
 
Saratoga Fleshpot
 
 
1995

ハガーマガーを守れ  Hugger Mugger
ロバート・B・パーカー  Robert B. Parker
菊池 光 訳  ハヤカワ・ミステリ文庫
依頼人は牧場経営者。牧場の馬が何者かに銃撃されているという。今のところ金銭的な損害は軽微だが、牧場には将来有望な名馬ハガーマガーがいる。その馬を守るため、銃撃犯を阻止して欲しいと依頼され、スペンサーは単身南部ジョージアに赴くが・・・

スペンサー・シリーズ第27作目。
このところ感じていたパーカー手抜き疑惑を、より強固にしてしまった作品(苦笑)。もともと緻密な作風というわけじゃないのは分かってるし、今までにも強引な筋の運びがなかったわけではないですが・・・、最後1ページでのこの結末のつけ方は、やっぱり手抜きと言いたくなります。途中で挟まるエピソードが結末と全然つながらないのもいかがかと。

他にも2本のシリーズをかかえてお忙しいせいなのか、それともいいかげん、このシリーズ、飽きてきたということなのか・・・?

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ディック・フランシス 競馬シリーズ

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