Hard-boiled

主人公がストイックでない小説をハードボイルドとは呼ばない(笑)。

ロバート・B・パーカー   Robert B. Parker
主人公スペンサー(ファーストネームはご本人が言わないので不明)。ボストン在住。元ボクサーで、しばしばトレーニングのシーンが出てきたりするのですが、ばりばりの“体育会系”というわけでもなく、詩を愛好してたり、おいしい料理をつくっていたり。(恋人の顔をプリントしたTシャツを着てジョギングしてたりも・・・)

『初秋』を読んだのがきっかけで、追いかけるようになったシリーズです。
寡黙なものと相場が決まっているハードボイルドの探偵としては異色な饒舌さなのだそうですが、相棒の黒人ホークとの“掛け合い漫才”や恋人スーザンとのディスカッションが毎回の楽しみ。アメリカ社会の実態が描かれているのも興味深いところです。

ファンの多いシリーズらしく、『スペンサーの料理』『スペンサーを見る事典』『スペンサーのボストン』といった本も出版されています。
 『初秋』

離婚した夫が連れ去った息子を取り戻して欲しいという依頼を受け、スペンサーはその少年ポールを見つけ出した。だが、彼は両親の駆け引きの材料に使われ、何事にも関心を示そうとしなかった。ポールを保護することになったスペンサーは、彼の自立のためにボクシングや大工仕事を教え始める・・・

“おすすめの本”のようなところで紹介されていたのがきっかけで手に取りました。少年に自立教育をするストーリーだというのに、「“私立探偵”が???」と思ったからだったんですが、読んで良かった! と思った本の5本の指に入ります。なにしろ、当時だいたいポールと同じくらいの年頃でしたもので。
いわば“児童虐待”の登場する話なのですが、「なにもしないで人から見放された状態に落ち込んでいったら、それはおまえが悪いんだ」という科白の出るあたりが現実主義者のスペンサーたるところ。周りがどうであろうと、結局は自分次第なのだ、という展開が救いになっているところが大好きです。
(その分『儀式』『海馬を馴らす』の展開がちょっと歯がゆいのですけどね・・・)

シリーズ作品リスト        訳者:菊池 光 ハヤカワ・ミステリ文庫
『ゴッドウルフの行方』
The Godwulf Manuscript
1973
『誘拐』
God save the Child
1974
『失投』
Mortal Stakes
1975
『約束の地』
Promised Land
1976
『ユダの山羊』
The Judas Goat
1978
『レイチェル・ウォレスを探せ』
Looking for
Rachel Wallace

1980
『初秋』
Early Autumn
1981
『残酷な土地』
A Savage Place
1981
『儀式』
Ceremony
1982
『拡がる輪』
The Widening Gyre
1983
『告別』
Valediction
1984
『キャッツキルの鷲』
A Catskill Eagle
1985
『海馬を馴らす』
Taming a Sea-Horse
1986
『蒼ざめた王たち』
Pale Kings and Princes
1987
『真紅の歓び』
Crimson Joy
1988
『プレイメイツ』
Playmates
1989
『スターダスト』
Stardust
1990
『晩秋』
Pastime
1991
『ダブル・デュースの対決』
Double Deuce
1992
『ペイパー・ドール』
Paper Doll
1993
『歩く影』
Walking Shadow
1994
『虚空』
Thin Air
1995
『チャンス』
Chance
1996
『悪党』
Small Vices
1997
『突然の災禍』
Sudden Mischief
1998
『沈黙』
Hush Money
1999
『ハガーマガーを守れ』
Hugger Mugger
2000
『ポットショットの銃弾』
Potshot
2001

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原 ォ   Hara Ryo
洒脱な文章、キレのいい会話、印象的な登場人物、緻密に組み立てられたストーリー、リアリティのある事件、地道な調査と、そして鮮やかなどんでん返し。ハードボイルドはバイオレンスアクションに非ず、と思っている私に、そうそう、ハードボイルドってのはこうでなくちゃ! と思わせたこのシリーズ。

とにかく主人公がかっこいい。冷たくはないのだけれど、感傷に流されることもなく、捜査に自分の主義主張を押し出しもしない。渋い中年である私立探偵・沢崎。愛想なしで金銭には無頓着。総じて不器用な男なのですが、セリフがいいのです。たとえば、高圧的な物言いをされる場面ではこんなふうに。
「弁護士を雇えるような身分ではないので、彼のいまの忠告を正しく理解できたかどうか自信がないのですが――要するに彼は、ぐずぐず言わずに知っていることを喋ったほうがてっとり早く金になるぞ、と言ってくれているのですか」『そして夜は甦る』より)

脇役もなかなかの存在感です。アル中の元パートナー渡辺が起こした事件以来の腐れ縁、新宿署の紙ヒコーキ(笑)錦織警部、清和会のヤクザ橋爪、といった面々ですが、会えば必ず憎まれ口の応酬になりながら、結構認め合っているような・・・ちょっと屈折した関係が印象的。
この、渡辺の起こした事件には、『さらば長き眠り』である決着がつきます。というわけできれいに片ついてしまったし、これで完結ってこともあるのかな、なぞと思ってみもしましたが、文庫版には「死の淵より」という掌編が収録されており、「第二期」に向けた構想はおありの模様。でもけりがついてしまった以上、錦織警部や橋爪との関係がこのままということは考えられず、どうなってしまうのか・・・少し気になるところです。

過去の事件や人間関係がストーリーに絡んでくることが多いので、読むときはシリーズの順番に読んだ方が良いです。とはいえ、『天使たちの探偵』の収録作品は『私が殺した少女』をまたいでるので、どちらを先にするかはちょっと悩むところかも(私は『天使たち』を先に読んで、正解だったと思ってますが)。

ちなみに、文庫のみですが、あとがきがわりにショートストーリーがつくという趣向もこのシリーズの特徴。『そして夜は甦る』収録の「マーロウという男」では表題どおりマーロウ論、『私が殺した少女』収録の「ある男の身許調査」では著者の経歴、『天使たちの探偵』収録の「探偵志願の男」では沢崎が私立探偵になった事情、という内容です。エッセイ集『ミステリオーソ』にも「番号が間違っている」という掌編あり。
 『そして夜は甦る』

事務所を訪ねてきた男は、佐伯というルポ・ライターが来たかどうかを知りたがり、大金の入った封筒を預けていった。ほどなく佐伯の妻の実家に呼ばれた沢崎は、連絡を絶っている佐伯を探し出すことを頼まれるのだが・・・

著者デビュー作にしてシリーズ第1作。そして私をこのシリーズにどっぷりはまらしめた作品(笑)。
右手を見せない謎の男、佐伯のアパートにあった死体、そして都知事選に絡む怪文書事件と 狙撃事件・・。二転三転するストーリーに、「彼らはいつも肝腎なことを見落とす。真実を伝えると言うが、所詮はその程度のことだった。」というさびの利いたラスト。
個人的には長編3作中、最も沢崎の魅力を味わえる作品だと思います。

とりわけお気に入りなのは、「映画館に入って映画を見ないような人種とは付き合えない」という独白。これが3人組に取りまかれ、凶器らしき物をつきつけられて話をした挙げ句、手錠で座席から動けないようにされた直後のことなんですから・・・(笑)。ちなみに記念すべき初登場のセリフは、
「彼に用がおありなら、少なくとも五年前においでになるべきだった。渡辺は昔のパートナーで、いまこの事務所には私一人しかいない。私の名は沢崎です」
性格よく出てます(笑)。

桑田が巨人入団の件で揉めてたり、清原がライオンズに入ったり、なんて新聞記事を読んでるのですから、時代としては自分がチビの頃(その年の甲子園の決勝、片方が山口代表だったので、応援した記憶はあるんです。選手は全然覚えてないけど。)ってことになるんですが、政治絡みの状況は、結構今に通ずるところがあるような気がしました(進歩無いってことか)。矢内原前知事というのはつまり、美濃部知事を念頭に置いてるんだろうな、ということは分かるんですが、何せ、向坂都知事の設定が映画スターの弟を持つ作家、ですから(笑)。

結婚に踏み切る前の佐伯名緒子の気持ちだけはさっぱり分かりませんでしたが・・・


 『私が殺した少女』

拾った宝くじが当たったように不運な日は一本の電話から始まった。面会場所に指定された 依頼人宅へ向かった沢崎は、誘拐事件に巻き込まれていたのだった・・・

第102回直木賞受賞作。ではありますが、個人的には、シリーズの中では一番苦手な作品。
いや、文章・会話の妙・緻密なストーリー、といった点はしっかりシリーズの水準を保っていると思います。身代金持って引っ張り回されるという緊迫感あふれる序盤から、地道な調査に転じて、二転三転する真相・・・というあたりまでは文句無く面白く読んでいたのですが、ラストに至って明かされた真相、というのがどうにも後味悪くて・・・

ハメット、チャンドラー、ロス・マクドナルドの個性は、一般に考えられているように彼らの創造した探偵たちの個性によっているのではなくて、彼らの依頼人や彼らが関わる事件の“個性”によっているのではないかということだ。乱暴な限定の仕方だが、ハメットはプロの犯罪者を相手にし、チャンドラーは富豪や特権階級の犯罪を相手にし、ロス・マクドナルドは最終的には一般家庭の犯罪を相手にした。〈ポイズンヴィル〉で調査をするリュウ・アーチャーは考えられないし、崩壊しかけた家庭の玄関のベルを鳴らすサム・スペードも考えられない。作者に可能なのは、彼の探偵にふさわしい依頼人と事件を与えることだけで、探偵の個性はむしろ読者によってつくられるのかもしれない・・・・・・

というくだりが『ミステリオーソ』にあるのを読みながら、やっぱり沢崎の相手は、よんどころない事情から事件を起こした人間より、もう少し確信犯的な人間の方がふさわしいんじゃないか、などと思ってしまったのでした。相手に向かって吐くセリフは「私は勝負に負けた人間が嫌いではないですがね。自分の敗北に気付かない人間や敗北を認めようとしない人間は、性に合わないのです」『そして夜は甦る』より)というたぐいのほうが似合ってるんじゃないかと。

しかし、結構ミスディレクションなタイトルですよね、これ・・・。


 『天使たちの探偵』

事務所を訪れた10歳の少年は、「ある女の人を守ってほしい」と言い、1万円札5枚を残して雨の中に消えた。やむなく調査を始めた沢崎は、銀行強盗事件に巻き込まれることになる・・・「少年の見た男」。娘のひき逃げ事件を目撃していないかと沢崎に尋ねた男は、次の日も事務所を訪ねてきた。昔の女に宛てた手紙を買い取れと脅迫されており、受け渡し現場に同行してもらいたいのだという・・・「子供を失った男」。事務所を訪ねてきた母親は、息子から「人殺しの罪を着せられるかもしれない」という電話を受けていた。調査の手がかりをつかむべく少年補導員を訪ねた沢崎だったが、その男は市議会員選挙の立候補者で、選挙活動の真っ最中だった・・・「選ばれる男」。その他「二四〇号室の男」「イニシャル“M”の男」「歩道橋の男」の全6編を収録した短編集。

日本冒険小説協会大賞最優秀短編賞受賞作。全6編のいずれも未成年者がからむ事件ゆえ、この表題なのだとか。
子どもだからといっていい加減にあしらったりせず、子どもに合わせたような物言いもせず、もちろん説教調にもならず、対等に会話をする沢崎。それゆえの心の交流とでもいうようなものが感じられる「少年の見た男」「子供を失った男」がとりわけ印象的。余韻の残るラストも良いです。

「子供を失った男」には、珍しく少々大がかりな話が登場しますが、初対面での崔貞熙と沢崎の会話、
「崔(サイ)さんと呼んではまずいのかな」
「どうぞ。あなたのことを沢崎(テツギ)さんと呼んでも構わなければ」
「構うね。私はそんな呼ばれ方をしたことは一度もない」
「ぼくも親しい人からは“チョエ”としか呼ばれない」
というやりとりには思わずにやり。
「選ばれる男」では、選挙活動そっちのけで少年救出に奔走する草薙候補に、なにやら沢崎が活躍を喰われている感じもありますね(笑)。

しかし、「空援隊」というネーミングはどうも・・・。も少しセンスのいい名前をつけられなかったものでしょうか?

シリーズ作品リスト        ハヤカワ文庫JA
『そして夜は甦る』

1988
『私が殺した少女』

1989
『さらば長き眠り』

1995
『天使たちの探偵』
〈短編集〉
1990
『愚か者死すべし』

2004

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レイモンド・チャンドラー   Raymond Chandler
 『大いなる眠り』

スターンウッド将軍の邸宅を訪ねたマーロウ。将軍は、娘が非合法の賭博で作った借金を、ガイガーという男に要求されているのだという。ガイガーの経営する書店を張り込み、自宅を突き止めたマーロウは、その家の中から銃声が轟くのを聞いた・・・

“命令不服従には、多少の実績がある”男、33歳の初登場作。ハードボイルドの古典とはこういう作品であったか、と文章や会話など、なかなか楽しく読んだのですが、読後感が今一つ、だったのは、最後に明かされる事件の真相のくだりで、・・・何これ、という感想になってしまったあたりにあるかと思われます。

さすがに双葉訳は、スターンウッド将軍のしゃべり方が「〜じゃ」だったり、マーロウが「モチです」とか言ってたり(「うふう」というのは何の訳?)、グレープフルーツに割り注が付いてたり(!)、古さが否めず。これでは改訳もやむなしか、と思ったので、村上春樹の新訳が出たのも読んでみました。圧倒的にこちらの方が読みやすいんですが、でも「背が高いのね」の返事は「それは私の意図ではない」よりは、やっぱり「僕のせいじゃない」の方がいいような・・・。


 『湖中の女』

化粧品会社の社長に妻の居所探しを依頼されたマーロウ。メキシコで結婚するという電報が最後の音信だったが、彼女の愛人はその事実を否定する。彼女が最後に滞在していた湖畔の別荘を訪ねたマーロウは、別荘の管理人が指さす水中に死体があるのを見た・・・

個人的には、チャンドラーの長編ではこれが一番好きですね。大元になる事件がぶれないので、本筋が何なんだか分からなくなったりしないし、依頼人が最後までちゃんと依頼人で、マーロウの個人的捜査にもならないので、余計なところに足をとられずに、素直にチャンドラー節を堪能できたからかと思います(笑)。身元不明の死体とくれば、ミステリ好きなら反射的に、何かあるなと思うわけですが、そうであったか、と思える真相でしたね。
惚れた女のせいで道を踏み外す男、ってあたりが『さらば愛しき女よ』と同じで、あの作品では読んでいてなんだかすっきりしないところだったんですが、こちらでは割にすとんと納得できてしまったのは、その男に対するマーロウの立ち位置の違い、によるものかと。

チャンドラー作品に登場する警察関係者ってなんだか印象薄くて、「警官その1」「警官その2」って感じだなあと思いながら読んでいたのですが、この作品では、代理シェリフのジム・パットン、ウェバー警部にデガーモ警部補、とそれぞれちゃんとインパクトのあるキャラクターでした。「警察の仕事にはいろいろと問題がある。政治によく似ているよ。人格識見、申し分のない人間を必要とする仕事なんだが、そういう人間を魅きつけるものが何もない。だから、手持ちの駒を動かして仕事をしなけりゃならないんで、こんなことが起こるんだ」というウェバー警部の台詞など、読みながら思わず苦笑いしてしまいましたよ。

シリーズ作品リスト        訳者:清水 俊二 ハヤカワ・ミステリ文庫
『大いなる眠り』
The Big Sleep
訳:双葉十三郎
〈創元推理文庫〉
1939
『さらば愛しき女よ』
Farewell, My Lovely
1940
『高い窓』
The High Window
1942
『湖中の女』
The Lady in the Lake
1943
『かわいい女』
The Little Sister
〈創元推理文庫〉
1949
『長いお別れ』
The Long Goodbye
1953
『プレイバック』
Playback
1958

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大沢 在昌   Osawa Arimasa
主人公鮫島警部。国Tに受かったキャリアでありながら、公安内部の暗闘に巻き込まれ、その鍵を握る手紙を預かったまま新宿署に転任してきたという設定。はみだし刑事ゆえに署の中でも孤立している、単独遊軍捜査官なのですね。
主人公への思い入れは分かりますが、三人称で書かれてる分、地の文に出るのがちょっと(苦笑;キャリアって設定も諸刃の剣になりそうではあるし)。
「あんたはやっぱりバカマッポだね。正義漢ぶって、怪我しても、殴られても、俺がやんなきゃ誰もやんないって、法律背中にしょって、つっこんでくんだ。死んだら本望だろ。格好いいって思ってんだろ」
と言わしめるきわどさのあるキャラクターではあります、確かに。
恋人であるロックシンガーの晶、防犯課長の“マンジュウ”(死人の意)こと桃井、弾道検査の専門家・鑑識の藪、など存在感のある脇役がいる分、それほど気になるわけでもないんですが。
そろそろ桃井も定年退官の歳が近づいておりますが、そうなったらこのシリーズ、どういう方向に進んでくんでしょうね?
 『新宿鮫』

歌舞伎町周辺で警官が連続して射殺される事件が起きた。署内に捜査本部が設置されるのをよそに、鮫島は改造銃作りの天才・木津を追うのだが・・・

存在感のある登場人物たち(木津の変態ぶりも含めて;笑)と緊迫感のあるストーリーで一気に読めます。ただ、改造銃がどんな形をしているか分からない、というのがラスト近くのスリルとサスペンスのポイントなんですが、しばらく経って、実物の写真を見る機会があるまで、てんでのみこめませんでした。時代の進歩までは計算外だったか(笑)。そういや、今って留守電の録音に時刻入りますよね。
個人的な好みを言えば、エドの存在が微妙に邪魔・・・。

真田広之が鮫島役を演じたものをビデオで見たことがあります。なかなか原作の雰囲気が出てたと思うんですが、ただ一点、これだけは言いたい。晶はドラッグのたぐいを一切嫌ってるって設定でしょう!


 『炎蛹』

歌舞伎町ではコロンビア人の街娼が殺され、近くのホテルでボヤ騒ぎが起きた。鮫島は藪の紹介で消防庁調査課の吾妻に協力を要請される。再び起きた街娼殺人事件の現場に、甲屋という植物防疫官が現れた。殺された女性は南米から恐るべき稲の害虫の蛹を持ち込んでおり、羽化するまでにはあと数日しかないというのだ・・・

個人的に、シリーズの中では一番好きな作品(文庫版の表紙だけは見るたびになんとかならんかと思うんですが・・・)。イラン人窃盗団と中国人グループの抗争、放火犯、殺人犯、そしてタイムリミットの迫る恐るべき害虫、という錯綜したストーリーも面白いですが、なんといっても鮫島とコンビを組んで虫の行方を捜す植物防疫官・甲屋のキャラクターがいい味を出しています。プロとしての誇りを持って自分の仕事に情熱を燃やしている人物といえば、前作『無間人形』には麻薬取締官の塔下が登場しましたし、本作に登場する「灰掻き屋」の吾妻もそうなのですが、甲屋にはどことなくとぼけた味があるのが好きで、こういう人物が鮫島の相方だというのが一番気に入っているところなのでした。

シリーズ作品リスト         光文社文庫
『新宿鮫』

1990
『毒猿』

1991
『屍蘭』

1993
『無間人形』

1993
『炎蛹』

1995
『氷舞』

1997
『灰夜』

2001
『風化水脈』

2000
『狼花』

2006

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