ジョン・ダニング John Dunning | |||
腕利きの「古本の掘出し屋」が撲殺されて発見された。事件を担当するのは、古書について該博な知識を持つ刑事クリフ。被害者の部屋を調べた彼は、戸棚の中に高く売れそうな本が何冊もあるのを発見する。しかし、最後に目撃された被害者は尾羽打ち枯らした様子だった。調べを進めたクリフは、被害者が大きな本の取引に絡んでいたらしいことを知るのだが・・・ |
リチャード・T・コンロイ Richard Timothy Conroy | |||
国務省からスミソニアン博物館に出向しているヘンリー・スラッグス。出世の道も見えぬまま、突然の海外からの来賓や、職員のパスポート問題などに振り回される毎日を送っている。そんなある日、来賓を案内した形質人類学の研究室で、頭蓋骨標本の中に創設者スミソン氏の遺骨が紛れ込んでいるのが見つかった。そして遺骨が納められている筈の納骨堂の石棺の中には・・・ |
リチャード・マシスン Richard Matheson | |||
脱出マジックの最中に脳卒中を起こし、今では口もきけず、車いす生活をおくる往年の名奇術師エミール・デラコート。奇術の小道具をなどで溢れかえったマジックルームこと書斎がいつもの居場所だ。屋敷に住むのは2代目として活躍する息子・マクシミリアンとその野心的な妻・カサンドラ、そして彼女の弟・ブライアン。ある日、この屋敷をマネージャーが訪ねてきたが、それがショッキングな密室劇の幕開けだった・・・ |
エリック・ガルシア Eric Garcia | |||
LAの私立探偵ヴィンセント・ルビオ。パートナーの交通事故死に不審を抱いて突っ走った結果、仕事はなく、金にも事欠いている。そんな彼のもとに、大手探偵事務所から下請け仕事が舞い込んだ。火事にあったナイトクラブの保険金詐取疑惑を調査することになったのだ。調べていくうちに、事件はパートナーの死のいきさつにつながっていく。実はルビオの正体は人間ではない。人間の扮装をしてはいるが、ヴェロキラプトルなのだ・・・ |
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アル中のバーテンダー島村は、ウイスキーを飲んでいた新宿中央公園で爆弾テロ事件に遭遇した。翌日店を訪れた女子大生は彼がかつて共同生活をおくった女性の娘だと名乗り、母親が事件の被害者であったことを告げる。さらに、犠牲者の中にかつて爆弾爆発事件を起こして彼とともに指名手配になっていた友人の名が含まれていることを知った島村は、警察から行方をくらます一方で事件の謎を追うのだが・・・ 江戸川乱歩賞、直木賞同時受賞作。というわけで全共闘と関係のあるストーリーだったはず、ということくらいは知っていて、正直言うと、その興味から読んでみようかな、と思ったのでした。(うちの両親、世代からいうとこのあたりなのですが、どちらも大学にいなかったので当事者ではなく、我が家ではあんまり話題にならないので)。 読み出したら止まらず、一気に読み切ってしまった小説なのは確かです。ストーリーはしっかり組み立てられているし、登場人物にも存在感があり、ディテールも興味深いものが揃っている。でも、全共闘世代だけが 喜んで読んでいる小説、という揶揄が分かるような気がしてしまったのも事実。 この辺は好き嫌いの問題だと思いますが、何というか、感傷はあるんだけど、精神的な格闘とか、対決が感じられない。依頼を受けて調査に当たっているならともかく、自分が当事者として事件に関わってて、どうしてこの主人公、こんなに淡々と「ノーテンキ」なの? というのがものすごく物足りなかったのです。だいたい、なぜこの主人公アル中なんでしょう? 世にアル中探偵ってのはいますが、ブロックのスカダーにしろ、それぞれ酒に逃避する理由があるのに、この主人公にはそれが見あたらない。捨ててきたものに執着が無いのなら、単なる習慣? 酔って赤の他人にからむくらいなら、ラストで一発犯人をぶん殴ってみたって良かろうに、と思ってしまいましたし。 そんなわけで、個人的には主人公より「奇妙なやくざ」浅井の方が、過去の重さとか内的葛藤を感じさせる分、ごひいきの登場人物でした。まあ、こちらもかなりきわどいところにいるキャラクターではありますが・・・ ところで、主人公(男)、友人(男)、関わる女性(現在死亡)とその娘って組み合わせ、どっかで見たような気がするぞ、と思ったら『佃島ふたり書房』(出久根達郎/講談社)がこれでしたね。回想を書く小説には使いやすいパターンなんでしょうか。 |
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日本最大の貯水量を誇るダムが武装グループに占拠された。職員とふもとの住民を人質に、50億円が要求される。タイムリミットは24時間。雪と悪天候に閉ざされたダムに、発電所職員・富樫輝男は単身立ち向かった。かつて自分の過失で死なせた友の婚約者と、同僚を救うために・・・ 映画化されたことでも知られる作品。前評判にたがわぬ迫力ある描写、ダムという舞台を存分に生かしたサスペンス・アクションを堪能しながら一気に読み進み・・・ラストで思いきりずっこけました。最後に来てこの終わり方はないだろ〜、とこれほどまでに思わせた本、記憶しているところでは、山本周五郎の『さぶ』以来ではないかと。 別に、冒険小説なんだから敵をやっつけてめでたしめでたしの作品がいい、というわけではないんです。ライアルの『深夜プラス1』にせよ、最近読んだところではチャータリスの『聖者ニューヨークに現わる』にせよ、ラストの一ひねりを面白く読みました。しかしこの本の場合、皮肉というにはいかにも後味が悪い。これだけ後味の悪い設定にしておいて、よくこれほど大部の作を書けたな〜、と妙なとこ感心してしまいました。(自分だったら、ラストでカタルシスを感じられない長編なんかとても書き通せない、と思う。) も一つ言えば、千晶さんの存在がいま一つ。これだけ筆を割くのであれば、も少し度胸がいいか機転の利く女性を希望します。そりゃ、主人公の活躍を喰ってはまずいのは分かりますが、これほどやることなすこと中途半端だと、心臓に悪いから大人しくしててくれという気分になりまして・・・ |
東野 圭吾 Higashino Keigo | ||||||
「おれ」は小学校の非常勤講師。下町にある小学校に赴任して2日目、体育館で女性教諭の死体が発見された・・・。赴任した先々の小学校で起きる事件を「おれ」が解決する連作短編集。その他小学生が主人公の短編2編を収録。
つきまとっては金をせびる前夫をはずみで殺してしまった花岡靖子。娘と呆然とする彼女の前に、アパートの隣人である高校の数学教師・石神が姿を見せた。なんと、彼は事件を隠蔽する手伝いを申し出たのだった・・・。 |
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五億円強奪事件の時効までにあと三ヶ月。容疑者は四人に絞られているのだが、捜査は尾行を続けるのみで進展がない。捜査会議の席上、神戸大助刑事が一つの提案をした。金の隠し場所を見つけるために、四人に金を使わせてみようというのだ・・・「富豪刑事の囮」。鋳物工業会社の社長が密室で焼死した。自殺する動機はなく、犯人はライバル会社の社長以外に考えられないのだが、犯行の方法が分からない。そこで大助の出した提案は・・・「密室の富豪刑事」。中小企業社長の愛児が誘拐された。従業員に払う給料で身代金を立て替えたのだが、子供は戻らず、もう一度同じ500万円を払えと要求されたという・・・「富豪刑事のスティング」。2つの暴力団が市内で鉢合わせをするという。大助の提案が通り、暴力団を全員ただ一つのホテルに泊まらせることに成功。しかし、夜半に暴力団同士の撃ち合いがあり、その階には断り切れなかった外人の新婚夫妻が泊まっていたのだが、その妻が死体で発見された・・・「ホテルの富豪刑事」。以上の連作4編を収録 事件現場とそっくりの社屋を持つ新会社を作るわ、身代金500万円を立て替えるわ、市内全部の旅館を借り切ってしまうわ、いやあさすが大富豪の一人息子、捜査に自腹を切るったって金の使い方のスケールがちゃいます。キャデラックを乗り回し、ハバナの葉巻をふかし、上等のスーツを濡らして平然としてたりってんじゃ、そりゃあ絶対に刑事には見えない(笑)。金銭感覚はちょっとずれてるというものの、基本的には正義感あふれる熱血刑事なので、イヤミってことはありませんが。父上が毎度ぶっ倒れそうになっては良い知恵を出してくれるというお約束もまた楽しい(笑)。 ミステリが本職じゃない作家さんだけに、読者への挑戦を登場人物に喋らすし、場面をシャッフルして書くし、「ホテルの富豪刑事」じゃあ県警の刑事はワーナー・ブラザースのギャング映画のスターのそっくりさんを揃えるし、とまあこちらも好き放題。 場面転換で改行を入れない癖があるのか、少々読みにくかったですが、意外に推理ものとしての骨格がきちんとしていて、こちらも楽しく読めました。 |